Presented by B.B.C./Biwako Bass Communications

Editorial
Vol.8(02/10/28)

やらなかったことを後悔しないために

 ひさしぶりに滋賀県琵琶湖で開催されているバストーナメントの様子を見に行ってみた。と言っても、JBなどのプロトーナメントではない。中主町の吉川漁港内にある石塚マリーナで10月27日に開催されていたLBBC(Lake Biwa Bassfishing Conpetition)第3戦のウエイインを見学に出かけたのだ。

 LBBCは今年スタートしたプライベートトーナメントで、16ft、70馬力以上のボートに限定、トーナメントエリアは琵琶湖全域、4月にテストマッチが開催され、7月から11月までに4戦のシリーズが組まれている。そのルールがユニークで、まず全戦に共通の規定として、シンカーはタングステン素材のものに限定、試合中にロストしたルアーの数を帰着後に申告、湖上のゴミを1人3個以上回収することを義務付けている。

 著者が見学に行った当日は強風による大荒れで、トーナメントエリアを琵琶湖南部に制限するほどだった。こうなるとゴミを探すだけでもたいへんではないかと思われたが、それでも各人3個かあるいはそれ以上のゴミを持ち帰っていた。

 それに加えて、各試合ごとにユニークな規定も設けている。7月の第1戦は使用ルアーをハードプラグかワイヤーベ イトに限定、9月の第2戦はバーブレスフック限定で、プラグはさらにダブルフック限定とするなどだ。10月の第3戦はスタート前に生分解性素材のワームを配布。その使用を義務付けることまではしなかったが、使用レポートの提出をトーナメント参加者に呼びかけていた。

 トーナメント団体としての環境問題に対する早め早めの取り組みは、これから日本国内のフィールドでバスフィッシングを続けていくために、他の諸団体も見習わなければならないと思った。これは規模が小さいから可能、大きいから不可能というような性質の問題ではないし、トーナメントに限ったことでもない。方法さえ考えれば、それぞれの組織や団体、個人の事情が許す範囲で何かできることがあるはずだ。

 ここでこういうことを書くのは、それをちゃんと伝えるのが取材者として当然の義務だと思うからである。つまり、取材して事実を見た人間としてやらなければならないことをやっているだけのことで、著者とB.B.C.を取り巻く事情が許す範囲内で可能なことをやっているに過ぎない。ところがEditorialをお読みいただいた方から、「あんなこと、よく書けますね」などと言われる。これって、他のメディアがよほど手抜きして、やらなければならないことをやってないか、やらなければならないことをできないような事情があるからではないのか。その事情というのは、知識や能力の欠如、利権関係、営業上の問題、思想、信条、好みなどいろいろである。

 トーナメントですごいウエイトが出たとか出ないとか、テクニックがどうとかこうとか、そんなこととは別に伝えなければならないことはたくさんある。それを伝えることはメディアとして世に存在するための責務である。そういう責任を果たさないから、世の中がおかしなことになる。今回のようなことを目にしたとき、それを伝える場が与えられないようなメディアで仕事をしている人達は気の毒な限りである。そんなのをジャーナリズムとはとても言えなから、メディアという何にでも使えるような言葉があてられていることを当事者は自覚すべきであろう。

 もっとも、取材と称しながら、そんなことに気付きもしない記者、編集者が多いのもまた事実。重大な事実に気付く暇さえないほどの過酷な労働条件しか与えれていないとしたら二重に気の毒な限りではあるが、会社としてはそのことも十分に計算の上で、クライアントや取材先が嫌がるような余計な仕事はしてほしくないから、わざと余裕がないようにしているのかもしれない。あるいは広告ガタ減り、部数ガタ落ちによるリストラで否応なしにそうなってしまっているのか。いずれにしても自分で自分の首を絞めるだけでなく、大切な取材相手やクライアント、最後には購読者の首まで絞めてしまっているという、三つどもえ、四つどもえの首の絞め合いをしている状況にかわりはない。

 話はLBBCのトーナメントから離れるばかりだが、ひさしぶりのトーナメント取材で感じたこと、思ったことをきっちり書いておきたいのでお許しを……。トーナメントの様子などについては、10月27日のB.B.C.ホット情報をごらんいただきたい。

 自分達が釣りをさせてもらっているフィールドのゴミを拾うのは、もはやあたりまえのことであって、一般のアングラーがいち早くやり始めたことを力のある組織や団体が遅ればせながらやっても、いまさら取り上げるに足る価値もない。組織力に頼んで動員数や集めたゴミの量を誇り、それをメディアが大々的に取り上げるに至っては笑止千万。できレースが世間の失笑を買っていることに気付きもしないのは、あいかわらずのおめでたい限りとしか言いようがない。

 本当に必要なのは、力のある組織や団体がそれぞれに工夫を凝らし、一般のアングラーにもフィードバックできるような形で様々な問題に取り組んでいくことだ。例えばLBBCがやったようなバーブレスフックやダブルフック限定のトーナメントで十分な釣果を得ることができれば、それが注目度の高いトーナメントであればあるほど、一般のアングラーに広まっていくことは十分に考えられる。ルアーメーカーがトリプルフックのモデルとは別のオプションとして、ダブルフックのモデルも作るようになるかもしれない。それを多くのアングラーが使うようになって、ルアーのロストが少なくなれば、それが釣り場環境の保全につながっていく。一般のアングラーをよい方向へリードしていくには、現状の後追いではなく、予想される事態に先回りした取り組みが必要なのである。

 これは、ゴミ拾いをする必要がないと言っているのではない。ゴミ拾いなどは当然するべきこととしてスマートにこなしながら、さらに進んだ取り組みも積極的に行う。そうすれば、自然に一般のアングラーからの評価も高まるし、その取り組みを見習おうとする動きが出てくるはずだ。これはトーナメントに限ったことではなく、メーカーならメーカーで、メディアならメディアで、それぞれ工夫すればできることはいくらでもあるはずだと言いたいのである。

 話をLBBCのトーナメントに戻そう。参加選手の中に浅野大和君の姿があった。今、琵琶湖バスのリリース禁止問題でバスアングラーからもっとも注目を集めている人物である。新聞などで伝えられた、滋賀県と県知事を相手に訴訟を起こした大津市在住の28歳の男性というのが彼である。その後、某タレントも訴訟に加わり、そちらの方が大々的にメディアに登場しているが、新聞などに出たのは大津市在住の28歳の男性の方が先である。

 訴訟ということで話を簡単にすますわけにはいかないのだが、注目すべき論点が一つあることをご紹介しておこう。リリースを前提としてバスを釣っている場合、アングラーには釣れたバスを所有するつもりは最初からない。そうすると、釣れたバスを手にはしていても、それはバスを所有しているということではなく、バスは無主物の状態(琵琶湖にいるバスは本来無主物であって、それを誰かが自分のものにする意図で釣り上げた時点で、その人の所有物になる。これは海の魚も特別の例外を除けば同じ)なわけで、リリースという行為は無主物を元の状態に戻しているだけということになるのだそうだ。

 つまり、キャッチする寸前にフックが外れてバレてしまったのも、自分でフックを外してリリースしたのも同じということになる。それを条例で禁止することはできない。たぶんそういう主張なのだと思うのだが、はっきり言ってこれで合っているかどうか、著者は法律の専門家ではないので自信がない。まあ、専門家の手にかかればバスのリリースがこういう法解釈になるのだなと感心した次第である。

 訴訟の相手が滋賀県とその代表者の県知事であるから、裁判になれば当然、反証しなければならないことになる。これまで日本釣り振興会が回答を求めた点などについても、否応なしに言及しなけらばならないわけで、訴訟の最重要ポイントはその点にあると思う。その成り行きに注目するとともに、世のメディアがどんな取り上げ方をするかも注視していく必要があるだろう。

 「訴えるぞ!!」と口で言うのは簡単だが、実際に訴訟を起こすのはたやすいことではない。某タレントが所属する事務所や出演局には抗議が殺到していて、これはタレント生命にも関わる問題だから、それを上回る数の応援メッセージをみんなで送ろうというキャンペーンを始めたメディアもある。著者は某タレントのことをよく知らないし、その意図についても何とも言えないので、ここでは応援するもしないも触れないでおく。訴訟の詳細については、雑誌などのメディアが近いうちに取り上げるはずなので、それをごらんいただいた上で、支持するかしないかは皆さん自身が判断を下していただきたい。もし支持するべきだと判断されたら、その次は自分には何ができるかを考え、それを行動に移していただくようにお願いする次第である。

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