Presented by B.B.C./Biwako Bass Communications

Editorial
Vol.20(03/02/01)

池原ダムは自動車専用道路なのか

 滋賀県琵琶湖で1月29日から漁船の立ち入り検査が始まった。おりから猛烈な寒波がやって来て肌を刺すような強風が吹き荒れる中、まことにご苦労さんなことである。ほかにも4月1日からの外来魚のリリース禁止条例施行や3月の駆除釣り大会の準備などで忙しい上に、漁業補償金の恐喝未遂事件もあるというのに……。おっと、失礼。恐喝未遂は県とは関係なかった。ついつい一緒くたにしてしまうのは、根っ子のところは一緒くたの事件ではないかと強く感じてるからで、それ以外に何か言いたいことがあるわけではない。

 前々回Vol.18前回Vol.19と2回続けて、琵琶湖で起きた事件報道の新聞記事を取り上げて深〜く突っ込んで解説してみた。ここしばらく、琵琶湖で起きた事件を伝える新聞やテレビニュースの報道はけっこうな量が流れたが、それをさらっと流して見ただけではわからない事件の複雑なありさまが少しでもご理解いただけたかと思う。

 事件が起こると、いろんな所でいろんな発表が行われ、またいろんな人が意見を述べる。その中には公式のものもあれば、非公式や個人的なものもある。その中に疑わしい点があれば裏付けを取り、どれが正しくて、どれが正しくないか、その意見はどういう意図で発せられたものかを慎重に吟味した上で、確認できた事実やなるべくたくさんの証拠と照らし合わせて事件の真相に迫っていく。このようにしてできあがっていくのが新聞記事やテレビニュースなのだが、それが事件のすべてを伝えているとは限らない。いや、むしろ、一面だけしか伝えてないことの方が多いのだ。

 ということは、欠落した部分が少なからずあって、それが事件の本質に大して関係なければ問題ないのだが、大いに関係あった場合はどうなるか。新聞社やテレビ局はたいていの場合、自分達のミスを認めたがらないから、そういう重大な事実を見逃していたような場合でも、後になって「重大な事実発見!!」みたいな伝えられ方をすることが多い。

 あるいは、次のようなこともある。事件に関わる多くの人達にはどうでもいいようなことであっても、一部の人達にとって極めて重大な事実というのがある。それを見逃しているか、見逃しているわけではないけど、記事やニュースにするときに、そういう事実はなかなか取り上げられない。証拠や証言が十分でないために、ここまではニュースにできるけど、ここから先は伏せておこうというようなこともある。もちろん紙面スペースや放送時間の関係もあるなら、何から何まで出せるわけではない。

 今回、琵琶湖で起きた事件に関しては、バスアングラーがもっと詳しく知りたいと思う情報が十分伝えられなかったのではないだろうか。中央からするとローカルにしか過ぎない琵琶湖で起きた事件であったために、初期の取材体制が十分でなかったのか、記事やニュースの多くが基本的に警察や県の発表に頼り、それに加えて発表やコメントを出す側の不慣れも手伝って、報道の最初の段階で混乱が見られた。テレビニュースは一報を流してそれっ切り。その後、新聞の方は、補強取材で出てきた事実を加えて、第一報よりも事件の真相に深く踏み込んだ記事が散見されたが、それでもバスアングラーにとって十分な内容ではなかった。そこでEditorial Vol.18とVol.19では、バスアングラーの立場からもっと深く突っ込んで記事にすればどのようなことになるかをシミュレーションしてみた次第である。

 ある出来事の真相に迫るには、その出来事に関わる何から何まですべて知っているのが理想であることは間違いない。しかしながら、世の中にはいろんな制約があって、なかなかそうはいなかい。すべてを調べつくそうと思ったら膨大な時間がかかるから、それで記事がものになったとしても、世に出たときにすでに事件が終わってるかもしれない。小説やノンフィクションを書くならそれでもよいが、新聞記事やテレビニュースのための時間は限られているのである。もちろん予算の問題もある。あるいは間違いない事実であっても、商業誌や民放ではスポンサーの関係で出せないこともある。そういう制約の中で作られているのが記事やニュースなのだということを今回の一件で多少なりともご理解いただけたのではないかと思う。

 さて、釣りの世界にもメディアはある。雑誌や新聞、テレビ番組、今ではインターネットで流れる情報も多い。それらが伝える情報にどれぐらい信頼が置けるかと言うと、はっきり言って釣りの世界ではメジャーなメディアでさえ先に書いたような制約が世間一般のメディアよりもはるかに多いのが現状だ。どれぐらい制約が多いかという実例は、そのうちご紹介できる機会があると思うので今回は置いておこう。それよりも問題なのは、そういう制約によって起こる不十分な取材や情報収集、その情報を処理する者の知識や経験の不足、さらにその足を引っ張る様々な圧力などが重なった結果、アングラーにどんな不利益がもたらされるかということだ。

 その一例をあげよう。奈良県の池原、七色ダムで岸釣りとフローターが禁止になるかもしれないという話がある。著者はその話をしばらく前から聞いていたので、どこかのメディアががんばって取材して、ちゃんと伝えてくれないかと思っていた。ところがその期待に反し、どこも取り上げないどころか、そういう規制をしようとする側に都合のよい方向にばかり話が伝えられてしまっているではないか。

 岸釣りとフローターの禁止というのは、池原、七色ダムにおけるボート運用の安全管理を組織立ってきっちりやっていこうという動きの中から出てきた話だ。地元のレンタルボート店、昇降業者、ダムとダム湖の管理主体である電源開発株式会社、村、消防、警察、漁協、森林組合などが一体になってボート運用のルールを作ろうということで話し合いが始まったのだが、いつの間にかそのルールの中に岸釣りとフローターの禁止が盛り込まれる方向で話が進むようになった。事実上すでに決まっているのかもしれないが、まだそれが公表されたとは聞いていない。

 なにしろ、こういう現場の当事者だけで行われる話し合いというのは、なかなか情報が出てこなくて、出てきたときには反対しようと思っても手遅れというケースが多い。琵琶湖バスのリリース禁止条例のときと同じだ。まあ、公式には情報が出てきてないわけだから、岸釣りとフローターの禁止はどちらか一方だけでもルールから外される可能性がなくはないが、今のところそういう話も聞いてないので、やはり禁止されてしまう確率がきわめて高いと思う。

 元々、岸釣り禁止というのは事故防止の観点から電源開発が望んでいたことだ。警察や消防は事故がなくなればそれに越したことはない。あえて岸釣りアングラーの立場から反対するとすれば、アングラーと接点のあるボート関係の業者なのだが、まわりに押し切られたのか最初から賛成だったのか、ごく一部を除いて強い反対はなかったようだ。

 フローターの禁止は、岸釣りの禁止よりもっと降って湧いたように話が出てきた。電源開発は最初、フローターのことを知らなかった。それがいつの間にか禁止を口にするようになった。どこかの時点で誰かに教え込まれたかのようにだ。関係団体からの反対は特になく、ボート関係の業者も一部が抵抗したのを除いて大部分はフローターの禁止に賛成。その理由は、ボートとフローターの間で事故が起こったときは間違いなくボートの側が加害者になるから、それに巻き込まれるのを恐れてのことだ。

 ということで、池原、七色ダムはこのままでは岸釣りもフローターも禁止の自動車専用道路になってしまう恐れがある。そのことを決める話し合いに、ここでもまた他の多くの釣り場と同じでアングラーの姿はない。アングラーの代表のような顔をしてる人物の姿があるだけである。その人物の影を見ると、長くて太い立派な尻尾が生えてるとか……。日本のバスフィッシングを代表するメディアが、そんな人物の調子こいた話を聞いただけで、アングラーにとって重大な事実を見逃してる記事を載せてていいのか!?

 これって、きっと後になって「重大な事実発見!!」っていう記事が続くんだろうね。気付いたときにはすでに事が終わった後で、手遅れの事後報道で体面だけは繕うなんてことにならなければよいと思うが……。その記事を載せてる雑誌が、1カ月前には他のメディアの報道姿勢を問題にする記事を載せていた。この原稿を書くにあたって記事の内容確認をしていた著者が、1カ月前のその記事を見たときには背筋が凍り付くような感じがした。

 なお、老婆心ながら付け加えるが、重大な事実というのは岸釣りとフローターの禁止のことだけを言ってるのではない。ほかにもいろいろあるので、ぜひがんばって調べて、その結果をどんどん公表していただきたい。アングラーから集めてる協力金なんか、いったいどうなってるんだろうねえ。もっともらしい円グラフなんか作ったって、実際には集まったお金のうちごく一部をコイやフナなどの放流に回してるだけだから、そんなの絵に描いた餅に過ぎない。そういうことを続けてると、しまいにアングラーから疑いの目で見られるようになってしまう。それを大きな声で言われないと気付かないようでは情けない限りだが、実際のところ、すでにそれに近い状況になってしまっているのではないだろうか。

 釣り関係のメディアの仕事って、ギャラは安いし、時間はないし、各方面との付き合いもあるし、琵琶湖の方でも忙しいし、いろいろと難しいんだよね。問題を徹底追求していったら、商業メディアが触れたくない事実がたくさん出てきて、そのまま表沙汰にしたら仕事にならないし、最後のところではなぜかいつもバスフィッシング関係のメディアにとってもっとも強力な壁にぶち当たる。そこをどうかいくぐって少しでもアングラーの役に立つ報道をするかが問題だ。そういう圧力に迎合するばかりで、本当にアングラーのためになる仕事をしないから、読者の信頼を失なう結果になっている。それがバスフィッシング関係の多くのメディアが抱え込んでしまってる最大の問題点ではないのか。

琵琶湖で続発する事件のニュースを見て思ったこと
B.B.C.ホット情報(03/01/26)

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