Presented by B.B.C./Biwako Bass Communications

Editorial
Vol.21(03/02/09)

2003年4月1日もう一つの大問題

 今年4月1日から琵琶湖バスのリリース禁止と並んでも、もう一つの大問題が起こる。バスアングラーにはピンと来ないかもしれないが、釣り業界にとっては、本当はこちらの方がよほど大きな問題かもしれない。改正遊漁船業法がこの4月1日から施行されるのである。

 遊漁船業法というのは、88年に東京湾で起こった海上自衛隊の潜水艦なだしおと大型遊漁船第五冨士丸の衝突事故をきっかけに急きょ制定された法律で、「遊漁船業の適正化に関する法律」というのが正式の名称。遊漁船の安全運行のための様々な規則を具体的に明記している。その規則の代表的なものをあげると、遊漁船業者としての届け出と登録、損害賠償保険への加入、乗船名簿の整備、安全講習の受講などだ。

 この遊漁船業法が大幅に改正されて今年4月1日から施行されるのだが、その中で特に問題となる点が三つある。まず第一の問題点は、遊漁船の届け出と登録を大幅に制度変更したこと。改正前は都道府県知事に届け出た上で、保険に加入するなど安全基準を満たした遊漁船は全国遊漁船業協会に登録してマル適マークを受けるシステムになっていた。それが改正後は、保険加入などの条件を満たした上で都道府県知事の登録を受けなければならなくなる。つまり、全国遊漁船業協会やマル適マークは、改正遊漁船業法の施行後は有名無実で何の意味もない存在になってしまうのである。

 第二点として、知事に登録した遊漁船業者は新たに遊漁船業務主任者を選任し、案内する漁場での採捕規制を利用客に周知しなければならない。つまり、都道府県の漁業調整規則などで定められた違反漁法をしてはいけないと、遊漁船や磯釣りのお客さんに言わないといけなくなるということだ。

 そして第三点として、違反者に対する罰則規定が強化された。無登録営業は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらの併科、事業停止命令違反は1年以下の懲役もしくは150万円以下の罰金またはこれらの併科などと、かなりの厳罰になった。

 なぜこのような改正が行われたかと言うと、一番問題だったのは、ちゃんと法律を守って保険に入り、乗船名簿を整備し、安全講習を受けるなどの条件を満たし、全国遊漁船業協会に登録してた遊漁船が、都道府県によって差はあるが、全体の10%台から20%台と著しく低い割合だったからだ。これでは、せっかく作った法律の実効がさっぱり上がらない。そこで厳罰主義の改正により、強制的に登録させようということになったわけだが、なぜそのようなことになってしまったのかを次に解説しよう。

 改正前の法律通り全国遊漁船業協会に登録してマル適マークを受けるには、まず最低条件として保険に加入しなければならない。この保険に入ろうと思ったら、漁業協同組合に入るか、釣船業共同組合に入らないといけない。マル適マークを受けるための全国遊漁船業協会への登録は、漁協か釣船業共同組合を通して申請することになっている。つまり、改正前の法律に従って遊漁船登録をしてマル適マークを受けた場合、保険と申請を担当するのが漁協と釣船業共同組合、登録とマル適マークの発行、安全講習を担当するのが全国遊漁船業協会という役割分担になってたわけだ。それ以外に、全国遊漁船業協会が認める団体に加入し、その団体を通して申請できるという規定があるにはあるが、こんな方法で登録してるケースはまずないので無視してよかろう。

 この登録には手間暇がかかるしお金もかかる。さらには、遊漁船を開業したいと思っても、誰でも登録できるものではない。様々な参入障壁を設けて敷居の高いものにしている。そうすることで遊漁船登録に関する権益を全国遊漁船業協会と釣船業共同組合、漁協が独占してたわけだ。その結果、どういうことになったかと言うと、面倒でお金のかかる登録なんかしたくないという業者が続出し、登録率が異常に低いという事態を招いてしまった。そんな実効の上がらない利権団体に過ぎない全国遊漁船業協会にはこの際退場してもらって、都道府県知事の登録に切りかえたのが改正遊漁船業法の重要ポイントの一つである。この改正に伴って、釣船業共同組合は各県単位で再構成されつつある。登録が都道府県レベルで行われるのだから、これは当然のことだ。

 次に、もう一つの大きなポイントである遊漁船業務主任者の選任と採捕規制の周知について。これは、船長が1人で営業してる普通の遊漁船を例にあげると、遊漁船業務主任者は船長が兼ねるのが普通だ。ちゃんと安全講習を受ければ法律上はそれでよいのだが、問題は採捕規制の周知の部分である。ここで各都道府県の漁業調整規則が注目を集めることになる。海釣りの盛んな多くの府県では非漁民(遊漁者)のマキエサ釣りを漁業調整規則で禁止しているから、船長はお客さんにマキエサ釣りをしてはいけないと指導しなくてはいけなくなるのだ。近畿では和歌山、兵庫、京都がこの項目に該当するのだが、遊漁船業者にとってこれは死活問題である。船釣りの大部分はマキエサを使う。磯釣りも、防波堤釣りも、イカダ釣りも多くはマキエサを使っている。漁業調整規則では禁止されていても、今までずっとマキエサを使って釣ってきたのだ。マキエサを使うから簡単に魚が釣れるのであり、大勢のお客さんが釣りに来てくれるのは、そういう誰でもよく釣れる簡単な釣りができるからだ。今さらそれを禁止だというのは、遊漁船や渡船を廃業しろと言ってるに等しい。従わなければ懲役か罰金だから、大問題になるのは当然である。

 今回の改正遊漁船業法の施行にあたり、このマキエサ釣り禁止の規則を見なおすようにという通達が水産庁から出された。戦後間もなく決められたまま改正されず、誰も守らなかった法律を今になって改正しようとするのは、いかにも泥縄と言うほかないが、これには事情があると思う。漁業調整規則というのは漁業調整委員会が審議し制定している。そのメンバーは漁業者の代表や学識経験者などが中心で、アングラーの代表も含まれているが圧倒的少数でしかない。学識経験者はもとより漁業者などの利権の代弁者でしかない。そのような委員会で遊漁者のマキエサ釣りを認めるというような改正は、よほどの事情がない限り不可能。そこで、改正遊漁船業法が施行されて、このままでは遊漁船業者がたいへん困るという事情を逆手に取って見なおしをさせることにした。遊漁船業者には漁師も多く含まれているから、漁業者も一概に反対できない。そういう状況で、以前からの懸案であった遊漁者のマキエサ釣りを認めさせる方向に持っていこうとしてるのではないか。実はこれは水産庁が最初から用意してたシナリオ通りで、改正遊漁船業法が施行されたらマキエサ釣りができなくなって遊漁船業者が困るという騒ぎも、水産庁は最初から計画に織り込みずみだったのではないかと著者は思うだのが、はたして真相はどうなのであろうか。いずれにしても、そんな法律を今までほったらかしにしてたという漁業調整規則の問題点があぶり出されたということは明記しておかなくてはならないだろう。

 今までなら、遊漁船業法という法律はあっても、適当にごまかしてやってればよかった。それが改正後は、無登録で営業してるのが見付かったら3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金なんてことになる。嫌でも登録しないといけないとなると、例えば漁師のついでに年間に何回かお客さんを乗せて釣りに出てた漁船などは、わざわざお金使って登録したって、それに見合うだけの収入はないから、これからは遊漁船はやめて漁に専念しようということになる。そういう船がけっこう多いので、休日は別船を手配してお客さんをさばいていた船宿などは、営業に支障が出ることが考えられる。

 海釣りだけではない。琵琶湖や霞ヶ浦、北浦のバスフィッシングガイドも遊漁船業法が指定する遊漁船に該当する。水産庁の指導により各都道府県がホームページなどに掲載しているガイドラインによると、遊漁船とは海面と指定された湖沼で、船舶により利用客を漁場に案内し釣りなどの方法で利用客に水産動植物を採捕させる事業であり、いわゆる釣船、磯渡し、潮干狩り渡し、いかだ渡し、カセ釣りのほか、最近流行しているシーバス釣りチャーターボート、観光定置網、指定された湖沼でのバスフィッシングガイド等が該当するとなっている。指定された湖沼とはサロマ湖、風蓮湖、温根沼、厚岸湖、霞ヶ浦、北浦及び外浪逆浦、加茂湖、浜名湖、琵琶湖、中海の10水域。わざわざシーバス釣りのチャーターボートやバスフィッシングガイドをいう文言を入れている点は、水産庁がこういう釣りを明らかに意識しているという意味で注目する必要があるだろう。

 滋賀県の広報誌である滋賀プラスワン1月号に「『遊漁船業の適正化に関する法律』改正説明会開催のご案内」というタイトルで次のような記事が載っていた。「平成15年4月1日から、施行される「遊漁船業の適正化に関する法律」の説明会を下記の日程で開催します。開催日時 2月20日(木)午前9時30分〜11時30分 場所 県庁大津合同庁舎7-B会議室 お申込・お問合せは下記まで 水産課 TEL077-528-3872 FAX528-4885」

 バスフィッシングのガイドを対象に遊漁船業法の説明会を2月20日にするというお知らせである。遊漁船業法に従う限り、4月1日以降、琵琶湖と霞ヶ浦、北浦、外浪逆浦では遊漁船登録をしないとガイドができない。もし登録しないでガイドしてるのが見付かったら、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金である。おそらくこれで、アルバイトでやってる自称ガイドなどは一掃されるだろう。あるいは、遊漁船登録がいらない池原、七色ダムなどへいっせいに移動するなんてことが起こるかもしれない。

 著者がEditorial Vol.16で「フィッシングガイドはレジャーでバスを釣ってるわけではなく、その点を突破口にすればリリースが認められる可能性がある」と書いたのは、この改正遊漁船業法の施行を受けてのことである。フィッシングガイドが遊漁船業法で指定された遊漁船業なのであれば、業としてバスを釣ってるガイドはレジャーではないから、「滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例」の「琵琶湖におけるレジャー活動として魚類を採捕する者は、ブルーギル、オオクチバスその他の規則で定める魚類を採捕したときは、これを琵琶湖に放流してはならない。」という規定の対象にはならない。つまり、ちゃんと法律に従って遊漁船登録したフィッシングガイドは、バスをリリースしてもよいのである。それならトーナメンターは全員が遊漁船登録してトーナメントに参加してはどうか。琵琶湖で釣ったバスをリリースしたい人は、全員が遊漁船登録すればよい。どうしても岸から釣りたければボートを岸に着けて釣るか、あるいはボートでどこかの岸に渡って釣ればよい。磯釣りの渡船は遊漁船なのだから、渡船の船長がお客さんを案内して岸に上がって釣りをすれば、これはフィッシングガイドだという理屈が成り立つはずである。

 それにしても気になるのは、滋賀県釣船業共同組合がどうなるのかということだ。釣船業共同組合というのは、元々漁協と手を取り合って遊漁船の保険を独占的に取り仕切る利権団体だったはず。それが滋賀県ではどうなるかというのは、ちょっとした見ものである。

 それと、もう一点。遊漁船業法はカセ釣りも遊漁船業だと定めている。ということは、レンタルボートを引っ張って行ってモロコ釣りのポイントまで案内するのも当然、遊漁船業だということになる。あれは、どう考えてもカセ釣りの一種だと思うのだが、それならバスフィッシングのレンタルボートを引っ張って行ってポイントまで案内するのも、やはり遊漁船業になるのか。そのあたり、フィッシングガイドの件と合わせて滋賀県水産課はどう判断するのだろうか。

Bassingかわら版Editorialのバックナンバーへ