Presented by B.B.C./Biwako Bass Communications

Editorial
Vol.45(04/11/25)

琵琶湖大橋問題から学ぶべき教訓

 子ネコの相手をしながら原稿を書いてるのは下野正希プロ。何の原稿かと言うと、11月25日発売の月刊誌バスワールドの連載記事のための原稿で、その冒頭に琵琶湖大橋の問題を取り上げている。

 滋賀県琵琶湖の有名ポイントにバスフィッシングのボートが集まって、その数があまりにも多いもんだから観光船などの航行の障害になってるという問題は、B.B.C.ホット情報で何回か取り上げさせていただいた。その場所が下野プロの原稿に出てくる琵琶湖大橋。県条例で3月1日から11月30日まで船舶の停留が禁止されてる橋脚のまわりに一時はバスフィッシングのボートが密集状態になって、航行の妨げになるだけでなく、このまま放置したらしまいに事故が起こるのではないかということで、滋賀県釣り団体協議会滋賀県フィッシングボート協同組合がレンタルボート店やマリーナ、トーナメント組織などに警告を発した。

 この問題をB.B.C.ホット情報で最初に取り上げたのは10月26日のことで、滋賀釣り協の加藤誠司会長がボート組合の菱田敬一専務理事に電話して、なんとか打つ手はないかと2人が相談したことを報告させていただいた。その次の11月19日のB.B.C.ホット情報では、ボート組合と滋賀県警とのやり取りについて報告している。その間、場所については「滋賀県の条例でボートを停めてはいけないことになってる場所」などという書き方に留め、具体的にどこかということを伏せさせていただいた。

 なぜ場所を伏せたかと言うと、具体的にどこかと書くと、その場所でバスがよく釣れてることを知らせるようなものだから、かえってバスアングラーを集めてしまう結果になりはしないかと心配したからだ。そこでBassingかわら版の記事では一貫して場所を伏せ、某所でまずい事態が起こってるという告知に留めた。それと同時に、具体的な警告は滋賀釣り協やボート組合、有力アングラー、フィッシングガイドなどを通じて行うことにした。10月24日に開催されたビワコオープンの直前にはこの告知が行き渡って、トーナメントのボートが集まるようなことはなかったし、その後次第に琵琶湖大橋に集まるボートが少なくなっていったのは周知の通りである。

 琵琶湖大橋の橋脚でバスが釣れることを誰が見付けたのかは知らないが、大勢のバスアングラーが集まるようになったのは、何人かの有名フィッシングガイドが毎日のように大橋で釣りをしたのがきっかけらしい。今シーズンの琵琶湖南湖は、琵琶湖のバスフィッシング始まって以来と言えるほどビッグバスがよく釣れて、特に夏の終わりから秋の前半までの間、南湖の沖のウィードエリアで50cm台から60cmを越える目を見張るような大きなバスが集中的にキャッチされたことは記憶に新しい。それが終わりかけたのが10月初め頃のことで、ちょうどこの頃から一部のフィッシングガイドとそれを取り巻いて釣りをしていたボートがいっせいに琵琶湖大橋へ移動した。それに引かれるように、さらにたくさんのボートが大橋の橋脚まわりに密集するようになったのである。

 つまり、南湖の沖のウィードエリアで大きなバスがよく釣れて強烈な刺激を味わったバスアングラーの一部が、同じような刺激を求めて琵琶湖大橋に漁場を移したということか。その場所が条例でボートの停留を禁止されていて、自分達のボートが他船の航行の妨げになってることに多くのアングラーは気付かず、一部のアングラーは気付いていたが知らん振りしたまま、それでもし事故が起こったら琵琶湖のバスフィッシングがどんなことになるか考えもしないままで……。

 11月後半の琵琶湖大橋は、バスフィッシングのボートがいなくはないが、元の少なさに戻っている。バスが釣れなくなったことによる自然減もあるかもしれないが、バスボートが目立っていなくなったのは告知が行き渡った結果だろう。その間、バスアングラーの間にも葛藤があった。フィッシングガイド同士で喧嘩腰の口論になった話も聞いてるし、注意されたことに対する不満の声も聞かれる。

 下野プロはフィッシングガイドに出る度に、大橋の停留禁止の橋脚まわりで釣りをしてるボートを見かけたら注意していた。日によってはボートの数があまりにも多くて、かまいきれないほどだったそうだ。それでも根気よく注意し続けないと、一部のレンタルボートや持ち込みのカートッパー、ゴムボートなどが釣りを続ける状況を一掃できない。バスアングラーの隅々まで告知が行き渡るものではないから、そういう現場の汚れ仕事をする人が必要なのである。今でも忙しい合間に琵琶湖でフィッシングガイドを続けてる下野プロは、そのことをよくわかってるから、雑誌に書く前に黙って現場に出て注意し続けた。

 下野プロだけではない。他のフィッシングガイドもお客さんや知り合いに伝える努力をしたし、一般のアングラーも友人に知らせた。ビワコオープン開催時には、表彰式のスポンサーあいさつでジャッカルの小野俊郎プロが参加者に注意を促した。このとき小野プロは琵琶湖大橋のことを言ってもいいものかどうか迷ったが、ビワコオープンに参加するレベルのアングラーなら具体的にどこだと言わなくても大橋のことだと気付くだろうし、ちゃんと説明すればそれで釣りに行くようなことはしないはず、参加者から一般のアングラーに告知を拡げる協力をしてもらうためには具体的な情報を伝える方が正解だと判断した。要は、同じ情報でもケースバイケースで扱い方は慎重に考えないといけないということである。

 琵琶湖大橋の橋脚の船舶停留禁止は、バスアングラーにとっては非常にわかり難い決まりだ。滋賀県水上安全条例の規定に基づいて出された公安委員会の告示は「琵琶湖大橋北側の橋りようの部分のうち同橋りようの東から数えて21本目の橋脚の北東端、同橋りようの東から数えて24本目の橋脚の北西端、琵琶湖大橋南側の橋りようの部分のうち同橋りようの東から数えて20本目の橋脚の南東端および同橋りようの東から数えて23本目の橋脚の南西端の各端を結ぶ線により囲まれた琵琶湖の水域で3月1日から11月30日まで船舶の停留を禁止する」ということになっている。それなら指定された範囲からボートが1cmでも出ていればバスフィッシングはオーケーという考え方が成り立つし、ロープを結んで係留するのはもちろんいけないが、エレクトリックモーターで少しずつボートを動かしてればいいんじゃないか、しばらく停船するだけならかまわないんじゃないかなど、停留という言葉の意味も非常にわかり難い。

 ガイド同士の口論は、違反エリア外の大橋の橋脚で釣りをするかどうかが問題になった。1人は違反エリアに入らなければオーケーと主張し、もう1人は違反してなくても有名ガイドが大橋で釣りをしていれば、それを見た一般アングラーが集まってきて違反エリアでも釣りをするようになるから自粛すべきだと言う。つまり、ルールを守るかどうかではなく、マナーと自覚が問題になったのである。

 それともう一つ、条例に違反する場所で釣りをしてても、誰に怒られるわけでもないということがあった。この点に関しては、アングラー同士が注意し合うようになったし、観光船業者からの苦情を受けた水上警察が警戒に出て注意されたボートもある。ボート組合でも、こういうことが起こっていて、組合や釣り協でも告知はするけど、それでも釣りをやめないボートには水上警察が注意してほしいということを申し入れている。これはあくまでも「注意してほしい」ということであって、取り締まりや摘発をしてほしいということではないので誤解のないように……。

 琵琶湖大橋の橋脚の船舶停留禁止規定は、バスフィッシングのボートが湖上利用者の大半を占める現状をまったく踏まえていないという問題もある。実際の航行の安全を考えるなら停留禁止範囲を拡げるべきで、現在の規定は現実的ではない。バスフィッシングのボートが橋脚のまわりに集まるなんてことをまったく想定せず、ただなんとなく橋脚の近くに停船したり、橋脚に係留することを禁止して、安全に通行できる航路を確保するための規定だから、違反ぎりぎりの場所で釣りをしよう考えるバスアングラーがいるなんてことも想定外。現実に合わせた停留禁止範囲の拡大を滋賀釣り協あたりが県に申し入れることを考えてもいいかもしれない。

 それで規定が改正されたとしても、やはり違反して釣りをするアングラーは出てくるだろう。そういうのは水上警察にまかせる。それ以外のマナーの部分は滋賀釣り協やボート組合、あるいはバスアングラーが団体を作って自発的に啓蒙できる体勢を創り上げるのが理想だ。ただし、現実はまだそんな状況には程遠い。だからと言って、決まりが抜け穴だらけだからバスアングラーが言うことを聞かない、水上警察は協力してくれない、県は何もしようとしないなどと文句を言ってるだけでは問題は何も解決しない。バスアングラーや業者、釣り関係者の1人1人が今できることをきちんとしていかないと、しまいにバスフィッシングのボートが琵琶湖から追い出されることになる。

 今回の琵琶湖大橋のケースは、なんとかぎりぎり大きな問題が起こる前に解決することができた。そのためには多くのアングラーと業者の努力があったことを今後の教訓にしないといけない。それと、今回はうまくいったからといって安心しないこと。いつ、どこで、同じような問題が起こってくるとも限らないから、それをいち早く察知して問題解決のために手を打てる体勢を整えることが何よりも必要だ。例えば現在の滋賀釣り協、ボート組合、トーナメント組織、クリーンアップ団体、釣りクラブなどのメンバーも含むもっと大勢のアングラーや業者が集まって情報交換や問題解決の方法を相談する場を設けることができないものか。その第一段階として、まずは情報交換のネットワークを作ることができないか。これからはそういうことも考えていく必要があるのではないだろうか。

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