Presented by B.B.C./Biwako Bass Communications

04/01/18

食材になれば「害来魚じゃない」!?
新聞の認識ってこの程度なのか

 1月17日付の中日新聞朝刊に上の写真ような記事が載りました。滋賀県守山市在住の66歳の男性がバスとブルーギルのなれ鮨の商品化に取り組んでいて、バスを「ビワスズキ」、ブルーギルを「ビワコダイ」という名称で商標登録を出願したという話です。

 その記事のタイトルが意味深で、考えさせられてしまいます。「もう琵琶湖の"害来魚"じゃない」って言うんですけど、これって食材として利用できるんだったら害魚じゃないっていうことですよね。バスアングラーや釣り業界が利用してるだけなら害魚で、地元の人が食材として利用すれば害魚じゃないんでしょうか。

 バスフィッシングの価値は経済的効果だけではありません。バスアングラーが休みの日にバスを相手に遊ぶことで、次の日からがんばって仕事や勉強に励むことができる、余暇によるリフレッシュ効果も大いにあるはずです。それにくらべれば、バスやブルーギルを鮒寿司もどきのなれ鮨にしたところで、それがどれぐらい広く一般に売れるでしょうか。新聞の認識なんてこんなものかと、読んでいてばかばかしくなってしまいます。

 今まで行政や新聞、テレビなどが手を組んで何年も続けてきた害魚キャンペーンによって、一般市民の多くはバスやブルーギルに対して今や最悪のイメージを持たされてしまってます。滋賀県なんかは今さらのように食材としてアピールしようとしてるんですけど、最悪のイメージを持たされてしまってる市民は、そんな魚を容易なことでは食べようとしません。これって、自業自得というものです。それを少しでも挽回しようと悪あがきしたあげく、こんな人をなめたようなタイトルが付いた記事ができあがるんですよね。

 すでに新聞やテレビの記者達の一部は、うわべだけの環境保護で塗り固めた外来魚キャンペーンの裏にややこしい問題がたくさんあることに気付き始めています。だけど、今まで一方的に湖のギャングだ、害魚だ、悪いのはパスアングラーだと言い続けてきたのを簡単に180度方向転換することは、メディアのメンツにかけてもできません。方向転換するにしても、自分達の無知やミスを一般市民や読者、視聴者に気付かれないように、ごく少しずつかわっていくだけです。そういう事情があるから、今回の記事のようにバスやブルーギルが役に立つこともあるとか、NHKが秋田県のリリース禁止を話題にしたときのようにアングラーや業者が困ってるとか、今頃になってやっと小ネタで少しずつ取り上げられるようになってるわけです。

 だけど、新聞社とか放送局が正面切って何か言うときには、いまだにバスやブルーギルは害魚で、悪いのはすべてバスアングラーなんですよね。あくまで体面を保ちたい社や局の方針と現場の記者の認識との間に乖離があって、それが次第に大きくなり、あちこちに綻びができ始めてるわけです。メディアがそういう矛盾を抱え込むと、隠し切ることは絶対にできません。できあがった紙面や番組にそれが見えてしまいます。賢い読者や視聴者が今回のような記事を見ると、メディアが抱えてる矛盾を嗅ぎつけてしまいます。

 そんな裏事情を理解しながらこの記事をお読みいただいたら、「もう琵琶湖の"害来魚"じゃない」って、けっこう意味深なタイトルだということがおわかりいただけるんじゃないでしょうか。湖のギャングだなんて今となっては言えないし、食材として利用される可能性を伝える記事で害魚なんて言い切ったら自己矛盾もいいところだし、そこで「害来魚」とひねったつもりなんでしょうけど、いかにもメディアとしての苦しみがにじみ出てるタイトルですよねえ。

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