Presented by B.B.C./Biwako Bass Communications

05/06/28

潮岬の一切魚属慰霊碑を
知ってますか

 天皇、皇后両陛下が太平洋戦争の激戦地サイパンを訪れ、6月28日に島北端のバンザイクリフで戦没者慰霊の祈りを捧げられたことを同日のテレビニュースが伝えました。そのニュースにチラッと写っていたのが、太平洋の塔という日本の釣り人が作った慰霊塔です。

 太平洋の塔は70年台後半に全関西磯釣り連盟や全日本サーフなどの釣り人が中心になって資金を集め、拓殖大学の学生の勤労奉仕により建立しました。当時、サイパンへ磯釣りに行く人が多く、バンザイクリフは好ポイントの一つでした。太平洋戦争末期に米軍がサイパンに上陸。北へ北へと追いつめられた人達が次々と海に身を投げたのがバンザイクリフです。そこで竿を出す釣り人が、犠牲者を慰霊するために太平洋の塔を作りました。

 全関西磯釣り連盟は太平洋の塔に続いて、和歌山県潮岬に一切魚属慰霊碑というのも作ってます。どういういきさつで潮岬に魚の慰霊碑を作ることになったのか、当時の事情に詳しい人に聞いたら、サイパンに戦没者の慰霊碑を作ったんだから、自分達がたくさん殺してる魚の慰霊碑も作らないといけないんじゃないかと、そういう話が出た勢いで作っちゃったんだそうです。その話を聞いて感じるのは、当時の釣り人のただならぬパワーです。

渺茫たり恵みの海
太平洋
黒潮躍るところ
潮岬
百千の魚競い
集まって
西日本の磯釣り
ここに始まる

 碑銘が「一切魚族霊」となってるのが、これを作った釣り人の心の大きさを感じさせます。自分達が釣った魚の霊を慰めるだけではなく、一切すべての魚を慰霊するための碑ですから、キャッチ&リリースで心ならずも傷付いて死んでしまったバスも、駆除で殺されたバスやブルーギルも対象に含まれます。バスアングラーも一生に一度ぐらいは、この慰霊碑を訪れて黙祷しないといけませんね。

 魚を釣りながら慰霊する。これこそ魚釣りの本質の最たるものだと思うんですけどね。「キャッチ&リリースなんて魚をいじめてるだけじゃないか」なんて次元の低いことを言ってる人達には、こういう釣り人のメンタリティーは理解できないだろうなあ。

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