Presented by B.B.C./Biwako Bass Communications

08/07/15

日本の海が
静かになった日

 「こんなことは盆正月でもないやろな!!」


 7月15日に和歌山県新宮市の三輪崎漁港で出会った漁師のおっちゃんの言葉です。全漁連の呼びかけに同調した全国の漁協がいっせいに休漁。和歌山の漁師もお休みで、漁船は港に係留したままだし、水揚げ場も閑散としてます。上の写真は生鮮マグロの水揚げ高日本一を誇る勝浦漁港のセリ場です。いつもの活気はまったくなく、漁師や漁協職員の姿も見えません。テレビの中継車がぽつりと停まってるのが何か場違いな感じがしました。


 セリ場の横の岸壁には、マグロの近海延縄船が何隻も横付けになってます。フィリピン人の船員が2人通りかかったので、「休み?」と聞いてみたら、「ペチャクチャ」と何を言ってるのかわからない返事が返ってきました。「Horiday? Waiting?」と英語で聞いても「ペチャクチャ」と何言ってるのかチンプンカンプン。フィリピン語はできないので、あきらめました。


 昨日、136kgのカジキを水揚げした三輪崎漁港も人の気配がなく、真夏のカンカン照りの太陽が照り付けてるから、まるで西部劇のゴーストタウンみたいになってます。三輪崎は間際まで休漁するのかどうかわからなかったけど、結局休むことに決めたみたいです。「こんなときに漁に出たらテレビや新聞の餌食にされるからな」と言う漁師のおっちゃんもいるぐらいですから、休漁の歩調を合わせるために裏ではけっこうな努力があったのかもしれません。


 すさみも当然お休み。たまたまこの日、遊漁船業の5年目の主任者講習があって、昼頃まで港で手持ちぶさたにしてた漁師のおっちゃんは三々五々会場へ。遊漁船登録してない人も、受けられるときに講習を受けておこうということで、けっこうな出席率です。


 水産業界では今回のいっせい休漁だけでなく、燃料代の高騰と魚価の低迷への対策として減船しようという話も出てるらしいですが、すさみで聞いてみたら「そんなことせんでも、ほっとくだけで減る一方やがな」との返事。現に毎年5隻以上のペースで漁船が減っていってるそうです。原因は高齢化。現在の漁船数が約100隻台半ばのすさみでこの勢いですから、全国ではものすごいペースで減ってるんじゃないでしょうか。そこへ燃料代の高騰が追い打ちをかけるのは間違いありません。なんせ、赤字なのに漁に出るような無理しなくったって、年金でやっていける漁師ばかりですからね。テレビや新聞のニュースも、ちょっとはそういうことを伝えてほしいですね。


 皮肉なことに、この日の和歌山県南部沿岸は快晴ベタナギ。天気がよくて波がないのはいいけど、風がないからめちゃ暑いんですよね。荒天でどっちみち漁に出られない日にいっせい休漁するより、こんな天気のいい日にいっせい休漁したことで事態がいっそう際立ったはずです。おじいちゃん達は明日はまた漁に出るんでしょうね。盆正月にもない海が異様に静かな日は、これ1日きりにしてほしいものです。

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