琵琶湖のバスフィッシング

5月/ゴールデンウィークを越えて
アフタースポーニングに向かう春の終わり
by/B.B.C.服部宏次


5月で思い浮かべることといったら、まず真っ先にゴールデンウィーク、そして五月晴れの青空、新緑。季節は確実に春の終わりから初夏へと向かい始めています。ところがバスフィッシングの方は、ゴールデンウィークのころがちょうどスポーニングのピークにあたり、その後、アフタースポーニングに入るとともにバスの活性が下がって釣りにくくなるというのが琵琶湖の平均的なパターンです。ビッグバス狙いの好機でありながらバスアングラーがものすごく多くて難しいゴールデンウィークと、アフタースポーニングのシビアなゲーム。今回はこの二つの時期を乗り切るための方法を解説しましょう。

 ゴールデンウィークというのは、ただでさえバスアングラーが多い琵琶湖に、1年で一番たくさんのバスアングラーがやってくるときです。岸釣りもボート釣りも、とにかく空いてる場所なんてどこにもありません。ちょっと動くタイミングが悪いと、入るポイントがどこにもない、なんてことがぜんぜんめずらしくないぐらいですから、それなりの対策を考えながら釣りをしないといけません。

 タイミング的には、名鉄のシャローや琵琶湖大橋東詰め、南湖のあちこちにあるアシ原などで、ちょうどこのころが狭い意味でのスポーニング、つまりバスが産卵するときにあたります。といっても、バスの産卵というのは多くの魚が一度に行動するというものではなく、ごく狭いスポーニングエリアに限っても、早い魚と遅い魚では1週間から2週間のズレがあります。それと、例えば琵琶湖大橋より南の南湖に限っても、スポーニングの早いエリアと遅いエリアでは1カ月近いズレがあるようです。というようなことから、ゴールデンウィークにピタリとスポーニングにはまっているエリアというのは、琵琶湖に数あるスポーニングエリアの中でも一部だけということになります。

 このスポーニングにピタリとはまっているときの釣りがどうなるのかというと、産卵というのはほんの一瞬の出来事ですから、まさにそのときの釣りというのは、まず考える必要はありません。問題はその前後のごく短い間ということになるんですけど、このときの数日間というのは、シャローのスポーニングエリアでビッグバスがウロウロする、めったにないチャンスということになります。

 バスの産卵というのは、まず雄が先にスポーニングエリアに入り込んで、スポーニングベッドを作って、雌がやってくるのを待ちます。そこへ雌がやってくると、産卵ということになるんですけど、雌は産卵が終わるとすぐにその場所から立ち去ってしまい、雄はその場所に残って卵を守り続けます。

 ここでバスを釣るチャンスというのは、雄がスポーニングエリアへ入り込んで、スポーニングベッドを作る場所を探すというか、本当にそういう行動をしているかどうかはわからないんですけど、とにかく産卵までのしばらくの間、雄を釣るチャンスはあります。雌の方はというと、産卵場所に近付くのは本当に短い時間のようで、こういう場所で釣っていても釣れるのはほとんど雄で、雌が釣れるのは10尾に1尾もないぐらいです。

 このときの雄バスと雌バスの見分け方は、雌の方が本当にお腹がパンパンで、肛門が赤く腫れたようになっています。雄の方は太ってはいても、雌の体型とはまったく違うので見ればすぐにわかります。

■アシ原の中のビッグパターン

 琵琶湖では、アシ原というのが、まず代表的なスポーニングエリアなんですけど、ここでの釣りは短い場所でも1カ月、長く続く場所では2カ月近くも成立します。ところが、本当のスポーニングがらみ釣りができるときというのは長くても1週間か10日ぐらいのもので、その中でも本当に面白いのは、せいぜい3日ぐらいのものです。

 この本当に面白い釣りというのは、そのスポーニングエリアに入ってくるもっとも大きなサイズのバスが釣れるということで、うまくそのときに当たれば、琵琶湖のことですから、45〜50cmを越えるようなバスをそれこそ何尾も釣ることができます。ただし、何度も言いますが、そういうチャンスはほんの2、3日のことで、よほどしっかりチェックしていないと見逃してしまいます。

 ゴールデンウィークのころに、このスポーニングのチャンスがやってくるエリアが、琵琶湖には何カ所もあります。もっとも、年によって早い遅いのズレがあるので、毎年かならずここが、ということは言えないんですけど、南湖でも名鉄のシャローのアシ原、赤野井湾内のアシ原の一部、鐘化の埋め立て地の南側にあるアシ原などのうちのどこかで、そういうことが起こります。

 アシ原での釣り方は、これはもう単純なもので、クローワームのフロリダリグやラバージグをピッチングでアシ原の中へ投げ込んでいくだけで、バスがいればグイグイとはっきりしたバイトが伝わってきます。釣り方のコツは、アシ原の端から端まで同じように釣るのではなく、少しでも変化がある所を狙うということです。アシ原の変化というのは、長く続くアシ原の両端部とか、途中で切れている部分とか、そこだけ沖へせり出している部分とか、島状に離れている部分とか、沖のブレークが近付いてる部分とかで、アシ原を狙うときは、全体を同じように平均的に攻めるのではなく、そういう変化のある所とその周辺を集中的にていねいに釣ることです。

 ただし、ここから先がゴールデンウィークの問題点なんですけど、このころのアシ原というのは多くのバスアングラーに狙われやすくて、ものすごいフィッシングプレッシャーを受けているということがあります。ところが、そんな状態でも、釣れるときというのはタイミングよく朝一番に入るだけで、デカいのがバタバタと釣れたりとか、そういうことがあちこちで起こります。ただ、釣れたからといって2日目、3日目がないのは、ゴールデンウィークには仕方のないことです。

 それともう一つの問題は、南湖の東岸部の赤野井湾などには、田んぼからの濁りが入るという問題があります。これは、琵琶湖周辺には兼業農家が多くて、休みが続くゴールデンウィークに田植えを集中的にすませるということがあって、田んぼに水を引いて泥をかき混ぜた後の水が琵琶湖へ流れ込みます。この濁りは普段の濁りとはまったく違う黒褐色の泥濁りで、たいてい4月30日ごろから南湖東岸の一部に出始めて、5月1日、2日と赤野井湾から下物にかけてのシャローに広がっていきます。このころに雨でも降ると、それはもうひどいもので、シャローの多くは釣りにならなくなってしまいます。

■濁りと戦わずに釣るための方法とは

 濁りの問題は、これはもう逆らいようがありません。まだ薄濁りの間は、バスは結構釣れるんですけど、それも程度問題で、濁りがひどくなると、はっきりと釣れなくなってしまいます。そうなったら、濁りのない場所を探して釣るだけです。

 これは注意深く観察すれば簡単に気が付くことなんですけど、アシ原の大部分が濁っていても、濁りの死角になる部分というのがあって、狭い範囲だけポッカリときれいな水が残っている所があります。そういう所に濁りを避けたバスが集まっていて、大当たりすることがあります。ただし、これも続いても1日か2日のことで、すぐに濁りが回ってしまいます。

 濁りは避けるしかないことなんですけど、人混みの方はどうでしょうか。対策は二つあって、まず一つは、人がまだ釣っていない場所だろうと、釣った後だろうとかまわず、残っている魚を狙うことです。このときは、とにかく徹底的にアシ原の奥を狙います。それも、他のバスアングラーがちょっと手出しのできないような奥のポイントを狙うと、意外と魚は残っているものです。このときは、ラバージグよりは障害物に対して引っ掛かりにくく抜けのよいクローワームなどのフロリダリグの方が有利になります。

 もう一つの対策は、この時期によい釣りができるのが、ごく短期間だということを逆手に取って、空いてるスポットをタイミングだけで狙います。このとき狙うスポットは、広いアシ原の中の一番おいしい部分に絞って、朝の早い時間帯などにそういう場所が空いているのを見逃さずにチェックします。このタイミングがうまく合えば、こらもやはりビッグフィッシュにつながります。

 ただし、デカいのが何尾も釣れる大当たりというのは、さすがにゴールデンウィークでも最初ころだけで、休みが続くにつれて、釣れても1尾か2尾という状況になっていきます。それでも大きなバスが釣れるチャンスはどこに転がっているかわからないので、朝一番は空きスポットを見付けてチェックしてみることです。

 それと、もう一つのコツは、小場所を見逃さないということです。アシ原の例をあげれば、赤野井湾の南に突き出ている烏丸半島のさらに南側の岸壁が長く続いた奥に、アシ原が残りカスになったような場所があります。こういうポイントを見逃すバスアングラーが多くて、意外な穴場になっています。これと同じようなポイントは、ほかにいくつもあります。例えば琵琶湖大橋の東詰めにあるアシ原なんかも、知っているバスアングラーは多くても、意外と空いていることが多いポイントです。こういう場所をしっかりと思い出して、チェックしてみてください。

■スポーニング前後のバスはどこに集まるか

 さて、ここまではアシ原の釣りでした。ところが、バスがスポーニングでアシ原に入っているといっても、そう長くない間のことです。このとき以外は、どこにいるのでしょうか。また、そのバスを見付けて釣れないものでしょうか。

 ゴールデンウィークがスポーニングにピッタリはまっている場所以外での釣りは、わずかに早いか遅いかのどちらかで、スポーニング直前あるいは直後の魚を狙うことになります。こういう魚がいったいどこにいるのかというと、スポーニングエリアのすぐ近くの、やや水深があって、バスが身を寄せるストラクチャーがある場所。琵琶湖でいえばその多くが、アシ原のすぐ沖にあるウィードエリアの中のどこか、ということになります。

 産卵直前のバスは、雄が比較的早くからスポーニングのための行動を開始して、アシ原の中などに比較的長い間いるのに対して、雌がそういう場所にいるのはごく短い時間で、それまでの間はすぐ近くのどこかで待機しています。ということは、スポーニングエリアに向かって移動してきた雌バスが、ある特定の場所でときがくるのを待っているわけですから、その場所にはかなりの数が集まっているということになります。それも、産卵のために集まっているのですから、小さいのはいなくて、たいてい40cmオーバーばかりで、50cm前後もめずらしくありません。

 そういう魚が集まる場所というのが、琵琶湖の場合、一番簡単な例が、アシ原の沖のウィードの中のどこか、ということになるんですけど、ウィードの中のどこなのかということが、このときは大きな問題になります。なぜかというと、前回に説明した通り、産卵直前のバスというのは、産み月に近い妊婦さんのようなもので、どちらかといえば活性が低く、それほど簡単には釣れません。それと、産卵直後のバスも体力を消耗し切っていますから、これはもう、あらゆるバスの中で一番釣り難いと考えた方がいいぐらいです。

 この釣り難いバスを釣るのにどうするかというと、バスがいるごく狭い範囲に絞り込んで、ソフトベイトで時間をかけて食わせるということになります。このときは本当にていねいに、バスの目の前にルアーを落としてやらないと食ってくれません。ですから、広いウィードエリアを手早く流すような釣り方では、魚がいるのに釣れないということになってしまうのです。

 産卵直前あるいは直後のバスは、スポーニングエリアの近くのどこか特定の場所にかならずいます。ところが、その場所というのが以外と狭い範囲で、しかも釣り難いものですから、そのエリアで釣りをしていても見付けることができずに、釣れないで終わってしまうということが多いようです。

 これが例えば、井筒マリーナからヤマハマリーナにかけての沖にあるウィードエリアとか、鐘化の埋め立て地の南にあるアシ原の沖のウィードエリアとか、名鉄沖のウィードアリアとか、そういう広いウィードエリアの中でも、バスが集まっている場所というのは、せいぜい5m四方から10m四方ぐらいの狭い範囲の中だけです。およその目安を言うと、ウィードエリアのシャロー側のエッジから少し中へ入った所で、ウィードの密度の適当な所。これは、ボトムから林のようにウィードが立ち上がっていて、適度の空間というか、すき間があるような所なんですけど、そういう所にバスが集まっているポイントが一つのウィードエリアで少ないときは1カ所、多いと3カ所ぐらいできます。

■ウィードエリアでのジグヘッドリグの効果

 ウィードエリアでの釣り方は、このときはもう、ジグヘッドリグだけあればいいって言うぐらい、ここ2、3年は4inのストレートワームをセットしたジグヘッドリグが威力を発揮しています。ジグヘッドのウエイトは16分の1ozで、これに頭も尻尾もないイモムシ型のストレートワームをセットします。スピニングタックルで、ラインは50cm前後もときどきヒットしてくるので、6lbを中心に使います。

 狙うウィードエリアは、水深が2m前後。ボトムから立ち上がったウィードが、水面に顔を見せるか見せないぐらいになっていれば最高です。そのウィードのすき間とか、かたまりになって生えている所があれば、そのまわりとか、ウィードの1本々々を狙うぐらいのつもりで、ていねいにジグヘッドリグを落とし込んでいきます。

 バスが食ったときのアタリというのは、コツンとかグッとかいうはっきりした手応えはめったになくて、たいていはワームを落とし込んでラインを張ったら食っていたという感じです。このときに、アレッとか言って油断していると、フッキングがちゃんとできなくてバラすことが多くなってしまいます。

 バスが食ったと思ったら、強すぎると思うぐらい強くフッキングするのが、この釣りの最大のコツです。ロッドも長さ6ft前後で、フッキングパワーのある強めのアクションのものを使わないと、50cmもあるようなバスの上アゴをジグヘッドのフックで貫き通すことはできません。

 デカバスが掛かっても、最初は意外と簡単によってきます。ところが、一度近くにきてから猛然と走り出して、このときにドラグ調整ができてないと、あっけなくラインを切られてしまいます。そのための対策なんですけど、最初はフッキングをきかせるためにドラグを強めに絞めておいて、バスが掛かって走り出してから、思いきり緩めて走りたいだけ走らせるようにします。

 バスは10mも走ったら絶対に止まりますから、それからボートのエレクトリックモーターをハイにして、バスが止まった所まで近付いていきます。その間、ロッドでラインを操作しながらウィードをかわし、近付いた分だけラインを卷き取っていきます。バスの真上まできたら、ゆっくり寄せてくれば、たいてい簡単に上がってくるんですけど、50cm近いサイズになると何回も走ったりするので、あとは同じことの繰り返しになります。

 ゴールデンウィーク中は、スポーニングエリアへ上がっている魚を狙うか、その沖で待機している魚を狙うかの二つのパターンがメーンです。これをうまく組み合わせて、いかに混雑をかわして釣るかという戦略的な部分が占める割合が大きく、普段とは違った楽しみ方ができるときでもあります。

 こういう釣りが続く中で、雨が降ってバスアングラーの数が少なかったりすると、意外とウィードのシャロー側のエッジでスピナーベイトに立て続けにヒットがあったりとか、沖の水深3m以上のラインでバイブレーションプラグにいいサイズがヒットしたりとか、そういう現象が起こります。これなんかは、バスが一時的にハイになったと考えるのが正解だと思うんですけど、バスのこういう動きというのは、5月の後半から6月始めごろの、アフタースポーニングから抜け出して体力が回復した最初のころに近いものです。

■アフタースポーン末期のパターン変化

 産卵で体力を使い果たした直後のアフタースポーニングのバスは本当に釣り難いんですけど、しばらくして体力がやや回復すると、難しいながらも釣れなくはない状況になります。このときもルアーはジグヘッドリグメーンなんですけど、ジッと止めていないと食ってくれなかったり、チョンチョンと強くアクションさせた方がよかったり、使い方の正解が激しくかわります。

 それともう一つ気を付けたいのは、アフタースポーニングから抜け出すに従って、思いきりボトムから浮かせてアクションさせないと釣れないときが多くなるということです。このころのバスは、次第にサスペンドする傾向が強くなるようです。

 アフタースポーニングのシーズンにバスを釣っていて、最初はスローな釣りにしか反応してくれなかったのが、だんだんとハイテンポな釣りが通じるようになり、ときにはウィードの上でグラビングバズやスラッグゴーなんかに飛び出したり、ベイトフィッシュを追って水面を走る姿が見られたりするようになってくるのは、本当にたのもしい限りです。 琵琶湖では、ゴールデンウィークを過ぎたころから多くのエリアがアフタースポーニングの状態になり、それから日がたつにつれて体力を回復したバスは、最初にいたスポーニングエリアの近くの狭い場所から分散し、だんだんと沖へと向かい、ウィードエリア全体に広がっていきます。

 ちょうどこのころが、琵琶湖ではウィードの伸び方が1年で一番激しい時期にあたります。それと同時にコアユやハスなどの群れが沖からウィードエリアのアウトサイドに近付いてきます。それにつられてバスも次第にウィードエリアのアウトサイド側に多くが集まり、活動は大胆で活発になり、トップウオータープラグやバズベイトにヒットしたりするようになります。

 ゴールデンウィークごろの静的ではありながら激しい釣り。アフタースポーニング初期の本当にスローな釣り。そしてアフタースポーニングから抜け出すころのアップテンポで過激な釣り。琵琶湖のバスフィッシングの中でも、5月を中心に4月末から6月上旬ごろにかけてのパターン変化というのは、もっとも激しくて難しく、だからこそ面白いシーズンの一つです。

次回、6月の「琵琶湖のバスフィッシング」は、アフタースポーニング末期から梅雨にかけて断続的に起こる爆発的な釣りを中心に、ビッグバスをキャッチするためのテクニックをご紹介します。お楽しみに。

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