琵琶湖のバスフィッシング

11月/シャローからディープへ向かう秋の終わり
by/B.B.C.服部宏次


爆発的に釣れ続いた秋のシーズンが終わりを迎えるとき、バスは越冬場所を意識した動きをはっきりと見せ始めます。ポイントもそれにともなってシャローからディープへ、ウィードからストラクチャーへ、さらには北風を避けることのできる南向きのマリーナや湾内などへと移っていきます。昨日まで、あれほど簡単に釣れたバスが、強い風が1日吹いただけで急に釣りにくくなった、というようなことがたびたび起こるのが、11月の琵琶湖のバスフィッシングです。今回は、そんなときのバスを理解するための考え方と対策を紹介しましょう。

 10月のバスフィッシングは、バイブレーションプラグやクランクベイトで広いエリアを流して数が釣れる、すごくイージーなシーズンでした。ところが10月末ごろになると、日によっては冷たくて強い風が吹いたりして、すごくタフることがあります。

 先週まではあんなに釣れたのに、なんて思うことが多いのが、このころのバスフィッシングの特徴なんですけど、まだ11月の始めぐらいまでは、一時的にタフってもすぐに回復して、2、3日もすればまた元通りに同じ場所でよく釣れるようになるのが普通です。

 ところが、これが11月後半になると、そうはいかなくなってきます。どこにでもいたバスの姿が次第に少なくなって、いったいどこへ行ったのか、と思うのがこのころです。よく釣れたバスが急に釣れなくなって、二度と元に戻らない場所があるかと思えば、ポイントによっては釣れるバスの数が日に日に減っていって、最後には本当に散発的になって、ついに釣れなくなる、という終わり方をする場所もあります。

 このころのバスフィッシングのパターンを理解するためには、秋から冬へ向かうバスの動きを理解する必要があるでしょう。

 それまで沖のウィードエリアで活発にエサを追っていたバスたちは、秋が深まり水温が下がっていくにつれて、寒さを避けるのに有利な場所へと、生活のメインステージを移していきます。寒さを避けるのに有利な場所というのは、たとえば波の影響を受けにくい深い場所とか、冷たい北風が直接当たらない岬の南側のワンド状の場所とか、湖流の影響を受けにくい大きくてしっかりしたストラクチャーの影とかです。

 真冬になれば、バスが釣れる確率が高いのは、こういったピンポイントだけになります。たとえば沖の深いところにある漁礁とか、南向きのマリーナの中にあるストラクチャーとかをねらっていれば、それだけでバスは釣れます。あとは釣り方と、それを押し切れるかどうかの問題です。それに対して、冬になりきっていないシーズンが難しいのは、こういった場所を絞り込んで釣るだけでは十分とはいえないということです。

 まだ10月中は、強い風が吹いたり、冷え込んだりしても、バスは秋のエリアにいるままでスローになります。ですから、天候がふたたび元に戻れば、すぐに釣れ方も回復します。

 これが秋も終わりかけるころになると、バスは秋のエリアにいながら冬のエリアを気にし始めます。そうなると強い風が吹いたり、冷え込んだりしたときに、自分がいる場所の近くにある冬のエリアっぽいところへ一時的に移動するようになります。こんなとき、近くに冬のエリアっぽい場所がないと、バスはすごく寒いめに合うんでしょうか。だんだんとそんなポイントから遠ざかるようになります。これを湖全体で観察すれば、それまではどこでもバスが釣れていたのが、だんだんと釣れるエリアが限られるようになってくる、という現象になります。

 ここで「冬のエリアっぽい場所」という言葉が出てきましたが、この場合の「冬のエリアっぽい」というのは本当の冬のエリアではなくて、秋のバスの一時的な避難場所という感じです。ですから、真冬にこんな場所をねらっても、成功する確率はそれほど高くありません。

 秋の後半から冬の始めにかけてのバスは、秋の場所からそういう冬のエリアっぽい場所への出たり入ったりを繰り返しながら、次第に行動範囲を狭め、水温が下がるにつれて冬のエリアっぽいところから離れなくなっていきます。さらに季節が進んで寒い日が多くなってくると、冬のエリアっぽい、というだけの場所ではバスをキャッチできなくなり、本当の冬のエリアの周辺でしかバスの姿を確認できなります。そうなると、いよいよ本格的な冬が近いということです。

■秋のシャローパターンが強風の影響でくずれるとき

 それでは実際のバスの動きを追ってみましょう。まず最初のポイントは、南湖の木浜沖のブレークがらみのゲームです。11月の早い時期のまだよく釣れている最中に、ものすごく強い風が吹いてタフったときのバスは、どのような行動をしているのかという例です。 このときによく釣れていたポイントは、木浜の2号水路の沖のブレークのシャロー側です。このブレークは湖岸近くから沖に向かってほぼ一直線に何100mも伸びていて、北側が水深2.5mほどと浅く、南側が水深5m以上に落ち込んでいます。バスはこのブレークのシャロー側に広がるウィードエリアの広い範囲で、9月末ごろから10月いっぱいまで30cmクラスがバイブレーションプラグでよく釣れていました。それが11月に入っても続いているところへ、突然、強い南風が吹いたのです。

 11月の琵琶湖南湖の天候の特徴として、南風が吹く日が多いことがあげられます。南風は南湖のバスフィッシングにとってあまりよくない風で、このシーズンのバスがタフる原因のほとんどは強い南風によるものです。

 このときは、それまで南風がほとんど吹かずに11月に入ってもバスがよく釣れる日が続いていたところへ、突然、強烈な南風が吹きました。そうなると当然、バスは押し黙ってしまいます。この風が吹き始めた日、最初のうちは広い範囲でバイブレーションプラグにヒットがあったのが、午後になるとブレークの近くでしかバスは釣れなくなりました。

 強い南風はもう1日続きました。2日目はボートを出すことは出したのですが、木浜沖は大波で釣りになりません。無理してバイブレーションプラグをキャストし続けても、ときどき小さなやつがポロッ、ポロッと、バスも無理して食ってきてる程度のヒットしかありませんでした。あとは風裏のポイントの釣りに終始しました。

 風が止んだ3日目、この日が問題です。同じポイントでバイブレーションプラグでがんばってみたのですが、まったくヒットはありません。ジグヘッドリグでやってみても、ほかのいろいろなルアーでやっても結果は同じです。

 そこで考えました。バスは2日前まではたくさんいた。それがどこへ行ったか。木浜沖は浚渫で湖底が非常に複雑になっていますから、そのうちのどこか、しかも急に風が吹きだしたんですから、前にいた場所の近くのどこか、たぶんやや深いところにきっといるはずです。

 木浜の2号水路の沖のブレークは、かなり長い距離で沖へのびてるんですけど、その途中にブレークが2段になって、4mほどのちょうどいい水深がタナ状になっているところがあります。このシーズンは早い時期から、このタナの上にいい状態でウィードが生えているのを確認していました。そのことを思い出して魚探でチェックしてみたら、やはりいい感じです。

 そこで、まずクランクベイトをキャストしてみたんですけど、反応はありません。釣り方をだんだんスローにしていって、ライトジグヘッドリグをウィードにからませながら泳がせるような釣り方で、ようやくヒットがありました。その後は、ビッグサイズはきませんでしたけど、40cmくらいまでが入れ食いです。このポイントは2週間ほど釣れ続き、その後はだんだんと釣れなくなってしまいました。その間、シャロー側が回復することはありませんでした。2日間吹き続けた南風の影響があまりにも強すぎたんでしょうか。

■ディープを近くにひかえたウィードのアウトエッジ

 次は、同じ木浜の4号水路の入り口の近くにあるブレークの例で、昨年の話です。

 昨年の秋の木浜は、バイブレーションプラグやクランクベイトの釣りが終わるのが比較的早くて、11月に入るとソフトベイトの釣りが中心になっていました。バスはブレークの浅い側の水深2mくらいのところにたくさんいたんですけど、プラグには反応がよくなくて、ジグヘッドリグやスプリットリグを使って、密度の高いウィードのエッジ部分をきっちり釣ることが要求されました。浅いところにバスがたくさんいて、ソフトベイトならポンポン食ってくるのに、プラグでは非常に釣りにくい状態だったのです。

 このときのバスが付いているポイントが面白くて、2号水路の出口の沖にあるブレークの北側のシャローにびっしり生えているウィードで、しかのそのウィードの沖側のエッジのごく狭い範囲、ウィードの密度がやや低くなった部分だけに、ものすごい数のバスが集中的に付いていました。うまく当たれば、ジグヘッドリグで1時間に30尾くらい釣れることがたびたびありました。バスのサイズは、小さいのは30cm弱くらいから、大きいので40cm弱くらいまででした。

 それと、風が吹いたりしてこのポイントであまり釣れないときは、近くのブレークのディープ側にたくさんのバスがいることに気付きました。こんな日はすごくスローで、釣れることは釣れるんですけど、浅いところで釣れるときほど数は出ません。

 この結果を次のように考えられないでしょうか。

 秋の後半になって、水温の低下を気にし始めたバスは、浅いところにいてエサを食ってはいても、寒さを避けることができる深場が近いところにあるポイントに集中するようになります。そして、天候によっては寒さを避けるために、一時的に深いところへ入るようになり、しばらくの間は浅いところと深いところを行ったり来たりしています。この状態が続く期間が長いか短いかは、その年の天候はポイントの状態によってものすごく差があるようなんですけど、昨年の木浜は比較的長く続きました。

 浅いところにいるバスが、ウィードエッジの狭い範囲にかたまっていたのは、深いところから上がってきたから、その場所とウィードをつなぐ何らかの移動ルートがあって、その先にいい状態のウィードエリアがあって、その中でも沖側のエッジが条件的にもっともよかったからでしょう。ディープからシャローへ移動してきたバスが、近くにあるウィードエリアの一番おいしい部分、この場合はエサを取るのにもっとも有利な沖側のエッジにたくさん集まるのは当然のことです。

 秋の終わりに近いシーズンのバスフィッシングは、木浜のブレークのようにディープとシャローが近付いているところが、一つの典型的な狙い場になります。その理由は、浅くてエサを取りやすいところと、深くて寒さを避けることができるところが、すぐ近くに両方あって、バスにとってはこの時期の急激な天候の変化をしのぎながら、越冬に備えてできるだけ食いだめしておくのにもっとも有利だからです。

■ルアーがウィードをさける動きを感じながら釣る

 次に紹介するのは、11月の名鉄沖のバスの釣れ方の変化です。これも昨年の話です。

 木浜沖とは対照的に、名鉄沖には人工的な浚渫跡のブレークがなく、水深は沖へ行くにつれてゆるやかに深くなっています。そして、その間の水深2m台から約5mにかけて、数100mに渡って延々と4本の導水管がのびているのは有名な話です。この名鉄沖の導水管は、1本の太さが60〜80cmあって、琵琶湖でも屈指の巨大なストラクチャーといえます。また、シャローからディープに連続しているという点でも、バスフィッシングにおいては非常に大きな意味があります。

 冬が近付くにつれて、この導水管にバスが集まってくるのは当然のことで、ここでは周囲のウィードエリアから次第に導水管の近くにバスが集まってきて、それにつれて釣り方も導水管を意識したものへと変わっていきます。その変化のパターンが毎年のウィードの生え具合や気象条件によってどのような影響を受けるかをしっかりと勉強することができるのが、名鉄沖というエリアなのです。

 昨年の名鉄沖は10月のまだ早いころからクランクベイトでバスがよく釣れました。すばらしい状態のウィードエリアが、水深4mラインよりもさらに沖にできていて、このディープ側のエッジをねらって1カ月以上に渡って面白いゲームが楽しめたのです。バスのサイズは30cmクラスが数は一番多かったんですけど、日によっては50cm近いのもヒットしてきました。ミディアムレンジのクランクベイトにそんなのがヒットするんですから、しばらくは意地になって通いました。

 そのときの釣れ方は、こんな感じです。

 水深は約4m。ウィードはボトムから1.5mくらいの高さにのびていて、トップの水深は約2.5mくらいです。その沖側のエッジの、魚探に移るウィードの影がだんだんと薄くなっていくあたりをねらってクランクベイトを泳がせます。ボートのポジションはシャローのウィードが生えている側に置いて、ウィードのない沖側へクランクベイトをキャストして引いてきます。

 クランクベイトはウィードの状態に合わせて、ラッキークラフトのCB−200とティムコのファットペッパーを中心に使いました。CB−200は潜る水深がちょっと足りないので、ラインをPEラインの1号にして水深をかせぎます。ファットペッパーの方は潜行深度は十分なんですけど、ウィードとのコンタクトをとらえたいので、こちらもPEラインの1.5号を使います。

 クランクベイトを引いてくる感じは、ウィードがまばらになったあたりのウィードとウィードの間を泳がせるつもりで、ときどきルアーにウィードがからむのを感じながらリトリーブします。この「からむ感じ」というが非常に微妙なんですけど、たとえば障害物を回避する能力の高いCB−200ですと、ウィードに当たったルアーがそれを避けている様子が、グリンというような感じでロッドティップに伝わってきます。

■クランクベイトが導水管にぶつかった瞬間に止める

 バスの中でも特に40cmを超えるサイズは、このプラグがウィードにからんで抜けた瞬間に多くヒットしてきました。もちろん、単純にウィードの上を通してきても釣れなくはなかったんですけど、確率高く釣るには、ウィードの間を、ウィードを避けながら釣ることが必要でした。また、なぜかクランクベイトにばかり、いいサイズのバスが反応していたので、CB−200にPEラインの1号という組み合わせがすばらしい働きをしてくれたのです。やや深めのポイントやウィードの外側では、ファットペッパーも活躍しました。

 この釣り方で10月末ごろまでは名鉄沖の水深4mラインの広い範囲で釣れていたんですけど、11月に入ると同じ4mラインでも、釣れるポイントは導水管の周辺に集中するようになってきました。それとともに、ウィードにからめながら釣ることが、ますます重要になってきました。さらには、導水管をダイレクトにねらって、いいサイズがヒットすることが多くなってきました。

 クランクベイトで導水管をねらうときは、導水管の上を斜めに横切るようにキャストして、クランクベイトがもっとも深く潜るときに導水管に当てるようにします。斜めにキャストすると、導水管にぶつかったルアーが、しばらくの間、ゴン、ゴゴン、ゴンと当たり続けるのが手に伝わってきますから、この手応えがくるたびにリールを卷く手を止めてルアーをストップさせます。

 50cm近いようなサイズのバスは、ルアーを止めた瞬間にくるのがほとんどで、この釣りでも、ルアーの動きがよくわかるPEラインが有利です。昨年の秋はクランクベイトで釣れながらも、釣りの内容はシビアそのもので、PEラインの有利さを強く感じることが多いシーズンでした。

 名鉄沖のウィードエリアから導水管に移ったクランクベイトゲームは、11月中旬になると、ほとんど導水管だけをねらうようになります。そのころには釣れる水深も4m以上になって、ティファのディープショットやビルノーマンのDD−22などのビッグクランクベイトの出番が多くなってきます。

 昨年の秋の名鉄沖では、ウィードエリアからストラクチャーへ、ミドルからディープへという絵に描いたようなパターンの変化が確認できました。バスの活性が下がりながら、エリアを移していく秋の後半は、バスを追いかけるのが比較的難しいシーズンです。できれば名鉄沖のようなエリアに絞り込んでパターンを追いかけるのがいいでしょう。

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