Presented by B.B.C./Biwako Bass Communications

Editorial
Vol.23(03/02/21)

インターネットの力

 Editorial Vol.21でご案内した滋賀県水産課による改正遊漁船業法の説明会には、フィッシングガイドでないバスアングラーも大勢参加したようだ。参加理由は純粋に琵琶湖でバスフィッシングを楽しむためかもしれないし、トーナメントに参加するためかもしれない。遊漁船登録すれば、法解釈的には2サイクルエンジンの規制対象からも外れるはずである。これで琵琶湖で釣ったバスを大手を振ってリリースできることになれば、なんとか琵琶湖でバスフィッシングを続けたいと思っている人達にとっては願ってもないことなのかもしれない。

 そこで問題なのは、一般のバスアングラーが取り残されることである。ガイドに使えるような大きなボートを持っているわけでもないし、そんな余分なお金もないというのが一般の大部分のアングラーの姿であろう。そういうアングラーは、4月1日からレジャーとしてのバスフィッシングを対象にしたリリース禁止条例の規定により琵琶湖で釣ったバスをリリースすることができなくなる。その一方で、遊漁船登録したごく一部のアングラーだけがリリースできるというのは、すべての国民の法の下の平等を規定した日本国憲法第14条に違反していると著者は思う。

 実際の運用にあたっては、滋賀県条例と遊漁船業法の運用上のすりあわせを行うことになるのだろうが、例えば遊漁船登録したバスアングラーがトーナメントで釣りをするのはガイド業の範囲内なのか、あるいはそうではないのか。もしトーナメントはガイド業の範囲外だというのであれば、すべてのボートにノンボーターを乗せて釣りに出ればそれはガイドだから、アメリカのトーナメントによくあるようなプロアマ方式にすれば成立するのではないか。プラクティスはガイドのための練習だから、これもガイド業の範囲内なのではないか。

 それなら取材のときは、取材スタッフをガイドしてることにすればよい。まともなギャラを払ってもらってなかった若いバスプロなどは、もし赤字ならガイド業とは認められないはずだから、これでやっと正当な報酬を得られることになる。たいへんけっこうなことだ。契約メーカーのルアーのテストなら、メーカーのスタッフに同乗してもらえばよい。そのときも正当な日当を支払ってもらわないと条例違反になる。ならば、そのプラクティスはどうなるのか。

 これらケースバイケースの判断をいったい誰がどこで下すのか。適法と違法の境界線は今のところあいまいなままだし、誰もが納得できる答を出せるとはとても思えない。なぜなら、リリース禁止条例を決めて運用しようとしている側も、遊漁船業法を実際に琵琶湖で運用しないといけなくなった県水産課のスタッフも、バスフィッシングのことなんか何もわかってないし、今さら誰かに聞くわけにもいかないからである。おそらく現在の情勢では、かなりの部分でやった者勝ちになるであろう。

 その結果、琵琶湖バスのリリース禁止に大きな風穴が開くのではないかと著者は思っている。なぜなら、琵琶湖でのレジャー活動だけを対象として外来魚のリリースや2サイクルエンジンの使用を条例で禁止すること自体が、元々矛盾を含んでいるからである。ならば、そのことを逆手にとって、違憲訴訟を起こして条例の差し止め請求をするというようなことも、やってみれば面白いのではないだろうか。

 ここで注意しないといけないのは、このようにしてバスのリリースを認められたアングラーと、バスフィッシングが遊びであるがゆえにリリースを認められない一般のアングラーの間に乖離が生じないかということだ。ごく簡単な例をあげると、一般のアングラーが釣りに来なくなったおかげでよく釣れるようになった4月1日以降の琵琶湖で、一握りのアングラーが大きなバスが釣れた釣れたと、一般のアングラーの気持ちも考えずに自慢する姿が目に今から浮かぶようである。こういう情報をメディアがどう扱うか。そのレベルの低さから考えて、下手をすると一般のアングラーのバスフィッシング離れをますます助長する結果にならないとも限らない。

 そうではなく、4月1日からのリリース禁止をなんとかうまく乗り切って、琵琶湖はなかなか釣りができないけれど、めったに乗ることができないガイドのボートで釣りをすることができれば、ケタ外れによく釣れる夢のフィールドであるというような方向に持って行くことができはしないだろうか。ただし、ガイドのゲストが釣ったバスをどうするかという問題は、あいかわらず積み残したままであるが、そのあたりのこともなんとか工夫しないといけない。それぐらいのことはしてでも琵琶湖のバスフィッシングを残す努力をしないと、それこそ条例を無視するアングラーだけが残ったなんてことになってしまう恐れ大である。

 そういうことに対するアングラーの側の監視役としても、なんとか少しでも多くのアングラーが納得して認められた形で4月1日以降のフィッシングガイド業をスムースに立ち上げる必要がある。そんなときに自分たちの利権だけを考えて行動するのは最低の行為だと思うが、そういうこともすでに耳に入ってきているから、みんなで注意する必要があるということも付け加えておこう。

 サポートメンバーの皆さんにはまことに申しわけないことなのだが、ちょうどこの遊漁船業法の説明会が行われた前後数日間に渡って、Bassingかわら版へのアクセスが不調になってしまっていた。DNSがらみの問題が発生しているとのことで、著者には何のことだかさっぱりわからないのだが、ご迷惑をおかけした皆さんには申しわけない限りである。ここしばらく、同様の現象が何回か起こっているので、最新情報だけ見ることができるミラーサイトを近いうちに設けることにした。サポートメンバーの皆さんはミラーサイトのURLを事前にブックマークしていただいて、通常のURLにアクセスできなくなったときはミラーサイトをご利用いただきたい。

 ちょうど遊漁船業法の説明会が行われる前の数日間、Bassingかわら版を見ることができなかったため、説明会の内容確認の電話を数人の方からいただいた。Bassingかわら版に出てたという話を聞いたが、今は見ることができないので、説明会の詳しい内容を教えてほしいという電話である。これって、ほかに調べようがなかったのかと思ってしまうのだが、滋賀県のホームページはこういう情報を調べるのに、わざと探しにくくしているのではないかと思ってしまうほど使い勝手が悪い。それ以外のメディアで改正遊漁船業法の説明会のことを伝えていたのは、バス関係ではついぞ見かけなかった。バスフィッシングガイドが所属している主要マリーナなどには案内があったとのことなのだが、それ以外は誰も知らないところで話が勝手に進んでいたという、例によってよくある話である。

 ひょっとしたら、説明会を聞きに行ったという人達のうちの一部は、Editorial Vol.21で著者が指摘した、遊漁船登録すればリリース禁止の対象にならないという点に注目して足を運ばれたのかもしれない。だとすれば、お役に立てて何より幸いである。中には、マリーナのメンバー全員が遊漁船登録しようかなんて話も聞こえてくる。ここでちょっと冷静になって考えていただきたいということで、上のようなことを書かせていただいた次第である。こういうところで他のメディアが何の役にも立たない一方、インターネットが何らかの役に立ったのだとしたら、これって大いに喜ぶべきことではないか。

 思えば琵琶湖バスのリリース禁止にしても、既存のバス関係メディアが伝える情報は後手に回る一方で、バスアングラーが何かしようとするのに事実上まったく何の役にも立っていない。有効な情報の伝達手段は、もっぱらインターネットであった。もしインターネットがなかったら、おそらく何の反対運動もできてなかったはずだし、リリースを禁止しようとする人達やそれを取り巻く新聞やテレビなどのメディアの側にすれば、特に反対はなかったということで終わってしまっていたであろう。それをここまで反対することができて、リリース禁止条例は成立してしまったが、他府県での反対運動につながるような議論や活動ができたのは、インターネットがあったおかげだと言っても過言ではないであろう。

 しばらく前のことだが、著者のところへ次のようなメールが届いた。

The US Congress has just authorized the President of the US to go to war against Iraq. Please consider this an urgent request. UN Petition for Peace Stand for Peace. Islam is not the Enemy. War is NOT the Answer. Today we are at a point of imbalance in the world and are moving toward what may be the beginning of a THIRD WORLD WAR. If you are against this possibility, the UN is gathering signatures in an effort to avoid a tragic world event.

please COPY (rather than Forward) this e-mail in a new message, sign at the end of the list, and send it to all the people whom you know. If you receive the list with more than 600 names please send a copy to:

unicwash@unicwash.org

Even if you decide not to add your name please send the petition on to others.

 この英語の説明の後ろにドイツ語とスペイン語の説明と577人の住所氏名が続いている。アメリカのイラク攻撃に反対なら、名簿の一番後ろにあなたの住所氏名を追記して、すべての知人に送ってほしい。もし600人に達したら、文中のアドレスに送ってほしい。賛同しない場合は、あなたの名前を追加しなくてもかまわないから、そのまま知人に送ってほしい。ものすごく大ざっぱに訳すと、そういう内容のメールなのだが、驚くべきことに名簿の住所が実に30カ国にも及んでいたのである。国名が出てきた順にリストアップすると次の通りになる。

フランス、スペイン、スイス、スコットランド、スウエーデン、ニュージーランド、イギリス、アメリカ、エクアドル、香港、レバノン、南アフリカ、アルゼンチン、アルメニア、チリ、メキシコ、ベネズエラ、韓国、ベルギー、オランダ、フィンランド、ドイツ、デンマーク、エジプト、アイルランド、アゼルバイジャン、オーストリア、ケニア、ボリビア、日本

 つまり、このメールはフランスに始まり世界中を巡って、やっと最後の最後に日本へ回ってきたのが30カ国目。それが世界の中で日本が置かれた立場だという、よく考えたら悲むべき現実を伝えているのだが、メールが来たことは喜んだ方がいいのかもしれないという、なんとも微妙な内容である。

 これって「すべての知人に送ってほしい」とあるからチェーンメールに該当するはずだが、600という制限がかかっているからそうではないのか。1人だけに回すようにすればかまわないのか。そのあたりのことは著者には判断できない。最後の送り先のunicwash@unicwash.orgは国連のインフォメーションセンターだから、これも見当違いなような気がする。ならば、自国の外交担当省とすればどうだろう。ホワイトハウスの方がより効果的か。だけど、こんなメールを送っても実際に戦争を防ぐ効果があるとは思えないから、単なる嫌がらせでしかないのか。いや、膨大な数になれば、それなりの影響力が出てくるのではないか。はたして本当にそういう効果があるのか。などと、いろいろ考えながらも、そのアイデアには感心した。インターネットというすばらしいツールを使って、もっといろんなことをできる可能性があるなと改めて思った次第である。

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