Presented by B.B.C./Biwako Bass Communications

Editorial
Vol.31(03/03/24)

琵琶湖のバスアングラーそれぞれの言い分

 Editorial Vol.29の最後のところでお伝えした未確認情報について、正確なことを確認できたのでご報告させていただく。滋賀県漁連青年会長が所有漁船の立ち入り検査で引っ掛かったという情報は事実であった。登録書類に記載されたエンジン出力と実際のエンジン出力に違いがあったことで漁船登録が取り消され、漁業調整規則で定められた出力制限を越えていたことから、アユ沖すくい網漁の漁業認可も取り消されている。これは噂や伝聞ではなく、滋賀県水産課がその事実を認めているから、間違いない事実だ。

 ご注意いただきたい点が二つある。一つは、現在操業できない状態になっているからと言って、操業停止になってるわけではないことだ。漁業認可の取り消しなどにより事実上操業ができてないだけで、水産課が操業停止処分にしたというような事実はない。それともう一点、漁業調整規則違反についても、例えばそれで検挙されたとかそういうことではない。漁業調整規則に違反した高馬力エンジンを載せた船で操業してるところを現行犯逮捕するか、漁から帰ってきたところを港で押さえるようなことをしない限り、高馬力エンジンを積んでるだけでは漁業調整規則違反にならない。そういう取り締まりを水産課や県警がしていないのだから、何100隻という漁船が漁業調整規則に違反する高馬力エンジンを載せていたとしても、それだけのことでは違反にならない。だから懲役や罰金をくらって前歴者になる漁業者は1人も出ないという、誰が考えたかはわからないが、そういうよくできた仕掛けになっているのである。なぜ取り締まりをしないか、その理由は今さら説明するまでもないだろう。

 このような事実をなぜ新聞やテレビは伝えようとしないのか。その理由も説明する必要はないと思う。外来魚駆除派の代表のような顔をして新聞やテレビに出まくり、おまけにご立派な著書まである人物が法律を無視して魚を獲ってたとなったら、これは信用失墜もはなはだしい。これから出さないのは当然として、こんなことやってましたと正直に言うだけでも、そんな人物を信用して相手にしてた自分達のバカさかげんを白日の下にさらすことになってしまう。それではたまらないから、なかったことにしておこう。それでバスアングラーに不利益があっても知ったことじゃないというのが大多数のメディアの態度である。

 日本でもっとも人気のあるTVニュース番組のホームページに「琵琶湖で獲れる魚の8〜9割を外来魚が占めている」という意味の記述があった。ということは、年間の全漁獲量が2000トンちょっとだから、外来魚は少なめに見積もっても1万トンは獲れてることになる。これに対する外来魚駆除予算が年間3億円として、1kg300円で買い上げても最大1000トン。漁業者が獲った外来魚の買い上げに予算のすべてが遣われるわけではないし、実際はもっと高く買い上げてることも考え合わせれば、この試算はものすごく控えめなものであることがご理解いただけるはず。それでも9000トンの外来魚が行方不明になってしまうのだが、それを漁業者は捨ててるのか、逃がしてるのか、どこかへ埋めてるのか。そういう小学生でもできる簡単な検算さえも某ニュース番組の製作スタッフはしなかったのだろうか。これを手抜きといわないで、何を手抜きというのか。あるいは、こんな簡単な詐術にも気付かないほど、メディアにとって琵琶湖の漁業者や滋賀県政は神聖にして犯すべからざるものなのだろうか。

 琵琶湖バスのリリース禁止に関して、有名バスアングラーにもっと発言してほしい、もっと積極的に行動してほしいという声があるが、前記のようなメディア状況を考えれば考えるほど、発言や行動に慎重になるのは理解できることだ。どこで何を言ったとしても、メディアの側に都合のよい部分だけをつまみ食いされて、自分達が本当に言いたいことをありのままに伝えてくれない。あるいは、まったく論理的でない揚げ足取り的な反論と抱き合わせでなければ取り上げてもらえない。そんなメディアを相手にするのは、審判が最初から敵の味方なのを承知で試合するようなものである。そんなところへ有名バスアングラーがわざわざ出て行って、相手に利用されることはない。

 3月22日に大津市で開催された琵琶湖の外来魚問題を考えるシンポジウムには、例によって漁業者と研究者の代表らが参加していた。研究者が毎度おなじみの顔ぶれだったのとは対照的に、漁業者の顔ぶれはすっかり入れかわっていた。その理由は、今まで出てた人達が逮捕されたり摘発されたりで出てこれなくなったからである。その意味では、少しはまともな顔ぶれに近付いたと言うべきか。それと、前例にもれずアングラー代表の姿はなかった。アングラー代表の出席については、主催者の滋賀県があちこちに打診したが、すべて断られたのである。世界水フォーラムに合わせたイベントらしく自然保護派の外国人タレントと小学生数人が出席し、琵琶湖のことをよくわかってるとは思えない外国から来た人が、外国から来た魚についての小学生からのありきたりな質問に答えるようなことをしていたが、リリース禁止の重要な当事者であるアングラーの代表がいないフォーラムで何をやったとしても、これは無知な人達やメディア向けの茶番でしかない。

 これまでも同様のフォーラムは開催されてきたが、すべてアングラー抜きであった。なぜなら、アングラーが出てきて本当のことを言ったら、漁業者や研究者、行政にとって都合の悪い事実が次々に出てきてフォーラムが成立しなくなってしまうからである。22日のフォーラムにアングラー代表が出てなかったのも、主催者の県は最初から断られるつもりで、いちおう声だけはかけましたというたてまえ作りをしたのであろう。しかしながら、フォーラムという美名のもとに力ずくで一方的なプロパガンダを行う県側のやり方の異様さが際立っていたという点で、県のやったことは成功とは言い難い。有名外国人タレントを呼んだことでメディアが注目したからなおさらである。その意味では結果オーライかもしれないが、県に声かけられて自分も大物になったものだと調子こいて出ていく有名バスアングラーが誰もいなくてよかった。

 リリース禁止に反対するバスアングラーが問題にしているにもかかわらず、メディアや行政がまったく取り上げようとしない論点は多々ある。そのような問題点を踏まえて議論するなら琵琶湖の環境は回復に向かうだろうが、自分達に都合の悪い事実に蓋をしたままでは、何をどうやっても魚が喜ぶ自然環境なんか回復できっこない。何が問題かは、Editorialで何回も書いてきた通りである。さらに付け加えれば、ブルーギルのことに頬被りしてる研究者が、琵琶湖の環境を40年前に戻すなんて言ってるのは、今やってる外来魚駆除が一段落したところで、次に漁連や漁協、漁業者に税金を注ぎ込むための露払いをしてるんじゃないか。今ある護岸の前で環境回復をお題目にした大規模工事を始めて、その工事費と補償金を支出するための下準備を今からしてるんじゃないか。それぐらい疑ってかからないといけないようなことを県や漁業者、研究者は過去から現在に至るまでグルになってやってきた。そのことをバスアングラーやバス釣り業界は知ってるから、論理的な説明もなく一方的に押し付けられるだけのリリース禁止には断固反対なのである。

 主な問題点は次の通り。

1>外来魚の拡散ついて、そのプロセスが明らかにされないまま、すべてバスアングラーとバス釣り業界の責任であるかのように喧伝されている。これは、まったくの事実誤認であって、そのような間違った前提に立った上でバスの完全駆除やリリース禁止を押し進め、反対する者の意見をまったく聞こうともしないのは民主主義のルールからの逸脱であると言うほかない。

2>在来魚と外来魚の正確な資源量の把握、外来魚による在来魚への影響調査などの基礎データがないまま人為的に資源量をコントロールすることは絶対に不可能。何の計画も見込みもないまま多額の外来魚駆除予算を支出し続けても、効果が上がるかどうか疑わしいだけでなく、漁法によっては混獲による在来希少魚への悪影響すら考えられる。そのような外来魚駆除の成果が上がらないからといって、バスアングラーのリリースを禁止する合理的な理由にはならない。

3>琵琶湖の外来魚に占めるバスの割合は小さく、本当はブルーギルの方が大きな問題である。外来魚駆除で捕獲されているのは、ほとんどがブルーギルなのに、県はバスとブルーギルを区別するデータさえ収集していない。バスとブルーギルの資源量、その割合などのデータもすべて推量でしかない。アングラーは圧倒的多数がバスを狙っており、リリースを禁止しても外来魚駆除としての適正な効果があるとはとても思えない。それどころか、アングラーが減ってバスもブルーギルも増えるか、あるいはリリース禁止によりバスが減ることでブルーギルがさらに増える結果となり、在来魚に悪影響が出る可能性さえある。

4>リリースを禁止する条例の要綱案の審議から県議会での可決成立、施行に至るまで間、一度もバスアングラーの意見が取り入れられる機会がなかった。その経過はきわめて不透明であり、内容はまったく公平性に欠ける。滋賀県は日本釣振興会など諸団体から出された質問に答えず、バスアングラーから寄せられたパブリックコメントには一方的に反論するだけで、最後までリリース禁止の効果について合理的に説明することはできなかった。それでもリリース禁止を押し進めようとするのは、バスアングラーに対する弾圧以外の何ものでもない。

5>条例施行後の施策についてバスアングラーの希望や意見がまったく取り入れられていない。県は外来魚回収ボックスやイケスなどを設置すると言っているが、バスアングラーの利便はまったく考えられていない。リリースは禁止するが釣りにはどんどん来てほしいと表明しているのが本当なら、アングラーの利便を第一に考えるべきで、現状では釣りに来るなと言ってるに等しい。そのような状態を放置したままの条例施行には問題があり過ぎる。

6>滋賀県の環境政策と漁政には問題点が数多くある。にもかかわらず外来魚の駆除を突出して押し進めようとするのは、他の問題点からメディアと一般市民の目をそらしたいからであり、リリース禁止はそのような政策上の狙いから出てきたものに過ぎない。合理的な裏付けのないままバスアングラーの自由を奪い、県内の釣り関係業者だけでなく多くのサービス業の減収を招くリリース禁止は即刻撤回すべきである。

 もちろん、ここに書いたことがすべてではない。ほかにも事実確認のできない黒い噂や封印された事実が数え切れないほどある。そういうことも含めて、琵琶湖とその周辺で起こってることを本気で調べ始めたら出てくるわ出てくるわ。そんな情報のごく一部がやっと世の中へ出始め、メディアもそのことに気付き始めたから、以前よりは外来魚問題の扱い方が慎重になり、表現の仕方もかわってきた。中には隠された問題があることを匂わせる記事も見られるようになったが、なかなか問題の核心に踏み込んではくれない。今はそういうところだ。

 有名バスアングラーの中にも積極的に情報収集している人達が少なからずいる。問題は、それをどこでどう生かすかだが、メディアからの誘いに安易に乗るのは危険きわまりない。うかつに出ていったら、メディアに都合のよいところだけつまみ食いされて、「有名アングラーの○○さんも在来魚を保護しないといけないと言っている。琵琶湖のバスアングラーのマナーは悪過ぎると嘆いた」などと、その発言を曲げて伝えられる。そういうことが度々行われてきたから、事情をよくわかった有名アングラーほど発言や行動に関しては慎重になる。その結果、有名な○○さんは何も言ってくれない、何もしてくれないと一般のバスアングラーから批判される結果になってしまってるのである。

 それならどうするか。加藤誠司プロがやったように、具体的な活動目標を持って、そのための行動グループを作り、日釣振のような組織を後ろ盾にして動くというのも一つの方法である。特に一般アングラーの問題意識を高めたり、署名を集めたり、そのきっかけとなるイベントの人集めをするには、有名アングラーの名前を使うのが一番手っ取り早くて効果が高い。そういう場には大いに出て、一般アングラーの意識を高めるための発言をするのが活動の初期段階にはもっとも効果的だろう。それが一般アングラーの行動につながり、メディアや一般市民の外来魚問題に対する認識をかえる力となる。そんな環境ができあがったところで、有名アングラーが一般メディアに出ていって世間に対して発言する。このような手順が必要だ。

 言いたいことが言える環境を整えるためには、様々な努力が必要である。著者がここでこのようなことを書いているのもその一環。釣り関係の他のメディアではなかなか出せないことを書いて、バスアングラーの皆さんに本当のことを知っていただくことから始めないと、問題は何も片付かない。そのためには情報テロのようなことも必要だから、著者は釣り関係の仕事をすべて断ち切る覚悟で、表に出せることはすべて出すことにした。テロリストになるということは、表の世界からは姿を消すか、あるいは裏の世界では別人格で活動すると言うことである。しかしながら、それでは潔くないので、今まで通りの立場と場所で活動を続けている。それでもし何らかの攻撃を受けることがあれば、それも計算の上で誰にも迷惑がかからないようにしたいから、あくまで単独行動を旨としている。スポンサーに圧力がかかる心配があるからスポンサードは受けないと言いたいところだが、経済的な問題もあるので、そこのところは絶対に信頼できるスポンサーとだけうまくやっていきたいと思っている。

 現在はそのような手順の途中の所で、有名アングラーが一般メディアに出て行くには、まだ危険が大き過ぎる。おそらく出て行ったとしても、言いたいことは言わせてもらえないだろう。当たりさわりのない予定調和的なことを少しだけ言わせてもらって、それでバスアングラーの代表にも出てもらいました、ご意見はうかがいましたということにされるのが関の山だ。それだったら出ない方がまし、今はまだ出ないと判断した結果、3月22日の滋賀県のフォーラムのように県側の一方的なやり方が際立つ結果になったのであれば、それはそれで成功だと評価してもよいではないだろうか。つまり、積極的に発言したり行動したりするだけが戦略ではないということである。

 バスアングラーの皆さんの気持ちとして、有名アングラーにも積極的に発言してほしい、行動してほしいと期待するのはよくわかる。しかしながら、そのときに問題なのは、どんな発言ができるか、どんな行動ができるか、その内容であろう。言いたいことも言えないのなら最初から何も言わない方がまし、自分から動いて落とし穴にはまるのなら動かない方がまだましというものだ。影響力の大きい有名アングラーほど、そのようなデリケートな判断が必要なケースがこれからも頻繁に出てくるはず。そのときに軽率な行動は慎まないといけない。判断ミスが致命的結果につながるかもしれないから注意が必要である。

 そのさらに先を読んでるアングラーは、バスフィッシングや琵琶湖とは別の所で今できる努力をしている。下野正希プロがバスフィッシング以外の釣りに真剣に取り組み、各分野での影響力や発言力を強めてるのがその好例である。結果はどう出るかわからないが、今はこういう努力が必要なときかもしれない。もし近い将来、バスフィッシングに追い風が吹いてきたとき、現在の努力は決して無駄にならず、大勢の強い味方を得ることができるだろう。

 こういう一般のバスアングラーからは見えにくい所での努力もあるから、一概に有名アングラーは何もしていないとは言えない。ただし、リリース禁止に反対する積極的発言や行動がごく少ないことも事実である。そこに何か事情があるに違いないと感じるのは著者だけではないだろう。その事情とは、有名アングラーが寄って立つ最大の基盤が信頼するに足るものかどうかということではないかと著者は思っている。つまり、例えば自分が参加しているトーナメント団体やスポンサーが自分の発言や行動を支持し続けてくれるかどうか、へたなことしたら君は明日から来なくていいなんてことになりはしないかという心配が、有名アングラーの発言や行動を鈍らせているのではないかということだ。

 もしこの仮説が当たっているとしたら、そのような状況を創り出している人達の責任はきわめて重大である。こういう人達こそ裏切り者と言われるべきで、表にいて目立ってる人達に大した責任はない。やりたいことをやらせてもらえない有名アングラーの責任を問うよりも、一般のアングラーが今すぐやらないといけないのは、有名アングラーの背後からその行動にしばりをかけ、結果的に一般アングラーに不利益をもたらしてる人達の責任を問うことではないのか。ノーと言うべき人物に対しては、そろそろはっきりと言うべき段階にきているのではないだろうか。

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