Presented by B.B.C./Biwako Bass Communications

Editorial
Vol.53(06/03/25)

4回目の4月1日

 あと1週間で琵琶湖がリリース禁止になってから4回目の4月1日を迎える。3月23日には琵琶湖レジャー利用適正化条例の改正案が滋賀県議会の全会一致で可決成立して、琵琶湖のバスフィッシングの今後のスキームとも言うべきものがほぼ確定した。バスフィッシングに強く関わる改正は、非環境対策型2ストロークエンジン搭載艇の航行禁止3年先延べとリリース禁止の県内全域への拡大の2点だ。

 2スト規制の先延べについては、滋賀県と協定を結んだマリーナにボートを預けていて環境対策型エンジンへの転換計画順守を確約した利用者に限るという条件付きだが、協定や転換計画などの具体的な内容がどうなるかは今のところまったくわからない。なにしろ今から2年後の08年4月からの規制をさらに3年後の11年4月まで先延べしようという話だから、具体的な内容はこれから詰めていくことになる。その過程で、規制が始まる以前に何らかの環境対策を講じる提案が利用者や業者側から出てくるかもしれない。例えば、オイル漏れなどの点検を定期的に行う、低環境負荷オイルを用いる、使用ずみオイルを確実に回収する、無用なアイドリング運転をしないよう指導するといった付帯条件が発生してくる可能性もないとは言えない。

 そのような取り決めについて県との交渉にあたる利用者と業者側の窓口として、滋賀県小型船協会の存在がにわかにクローズアップされてきた。同協会としては、バスフィッシング用ボートに関する意見を聞く窓口として滋賀県フィッシングボート協同組合を強く意識し、会合に代表者の出席を求めている。実際の話、琵琶湖で動いているプレジャーボートの圧倒的多数はバスフィッシングのボートであり、そのとりまとめと言うか、意見を代弁できる組織がフィッシングボート協以外にないのであれば、その意見を無視するわけにはいかないし、物事を前へ進めることもできない。バスアングラーとしては、フィッシングボート協を通じて必要な働きかけを続けつつ、理不尽な取り決めを押し付けられたりしないように注意深くことの成り行きを見守っていく必要があるだろう。

 リリース禁止の拡大については、まったく滋賀県らしい玉虫君がまたも転がり出たと笑わざるを得ない。滋賀県が強い決意と十分な予算、人事を持って県内全域のキャッチ&リリース禁止に取り組むとすれば、それは確かに拡大と言えるだろうが、はたしてそんなことが可能だろうか。県内すべてのダム湖や池、川に監視員を派遣し、外来魚回収ボックスやイケスを設置し、回収に回って集まった外来魚を処理する。それが実際に効果を上げるためには、どれだけの予算と人手がかかるか。

 それだけではない。本気で防除しようと思うのであれば、防にも十分な体制で取り組まないと、いくら除だけがんばっても無駄である。つまり、不法放流を防ぐための努力を十分しないといけない。その点に関しては、すでに予算措置を講じて監視員を配置してる琵琶湖でまったく実績が上がってないばかりか、県の味方であるはずの研究者が調査結果を元に不法放流は続いてると強く主張しておられる。琵琶湖の湖岸線が単純とは言わないが、それよりはるかに複雑で広範囲に拡がる水域をどうやって監視するのだろうか。

 すべては絵に描いた餅。それもカビだらけの食うに食えない餅をCG技術を駆使してリアルな画像に仕上げた、滋賀県がやってるのは、そんなひたすらバーチャルな行為である。だったら、バーチャルな世界でがんばることに生きがいを感じてる人達に協力を仰いで、ボランティアで活躍する場を作ってあげれば、カビを少し減らすぐらいの効果はあるかもしれない。あっ、そんなことしたらカビを減らすどころではなく、本体まで腐ってしまうから逆効果か!! これは失礼をば……。

 県議会への改正案提出にあたって、県の担当者は事前に琵琶湖レジャー利用審議委員の1人であるジャッカル加藤誠司プロと滋賀県釣り団体協議会のメンバーの1人に連絡してきた。審議会の答申ではリリース禁止を琵琶湖への流入河川だけに拡げることになっていたが、誠に残念ながら議会に提出する改正案では県内全域に拡大することになったと、わざわざそのことを知らせてきたのだ。その真意は定かではない。もしかしたら、リリース禁止の拡大を望んだ審議委員のところへも同じようなお知らせが行ったのかもしれない。それはあるいはリリース禁止への罰則制導入を阻止することとバーターであったかもしれない。2スト規制先延べに対する猛烈な反対の矛先をかわすことが狙いであったかもしれない。

 であるならば、実際のところ琵琶湖のバスフィッシングが今以上に影響を受けることは何もないんだし、どうせ玉虫君なんだから、バスアングラーとしては加藤プロの解釈に従って、あの改正は外来生物法の規定を条例に追加しただけなんだという事後了解も成立するはずである。つまり、琵琶湖のレジャー利用を規制する条例で「レジャー活動として魚類を採捕する者は、外来魚(ブルーギル、オオクチバスその他の規則で定める魚類をいう。)を採捕したときは、これを琵琶湖その他の水域に放流してはならない」と決めてるわけだから、「魚類を採捕する」場所はあくまで琵琶湖のはずであり、それを「琵琶湖その他の水域に放流してはならない」というのは、琵琶湖やほかの水域にリリースしないでね、外来生物法を守ってねと環境保護に熱心で先進的なことでは日本屈指の滋賀県がお決めになったのだと、そういう風に理解しておけばよいのだ。

 通常であれば、リリース禁止の拡大なんてことは鳴り物入りで発表して、新聞やテレビにバンバン出まくる。そういうことをやってきた滋賀県が、今回に限っては積極的な広報をまったくせず、内々にお知らせしただけ。新聞やテレビも地元以外ではほとんど話題にならなかった。その理由は、上記のような含みがあったからではないのか。加藤プロが言ってるのは、そんな滋賀県のメッセージをバスアングラーは賢く受け取ってあげようよということ。バスアングラーの皆さんは加藤プロからのせっかくのメッセージを賢く受け取ってあげていただきたい。

 非環境対策型2ストロークエンジン搭載艇については、06年4月1日以降に所有したものは琵琶湖で航行できなくなる。この規定もまた玉虫君であることにかわりはない。この件についてはB.B.C.ホット情報ですでに書いたので繰り返さないが、ヒントだけ書いておこう。問題の要点は、「所有」ということを規制除外の要件にしてること。なにしろボートなんてものは、知人から譲ってもらって乗ってるけど、お金はまだ払ってない、名義変更も次の検査までほったらかしなんてのが世の中にいくらでもあるからね。そんなあいまいなものを玉虫君条例で規制しようというのは、これはもう神様か暴君でなければ無理。おまけにジョージ・ワシントンのごとく私は審議会の答申を無視しましたとバスアングラーの代表者にみずから申告した滋賀県は、これからいったいどうするつもりなのだろうか。

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