田辺哲男の
Thinking Bass Game


No.2 厳冬期にバスが釣れる理由
(1月下旬から2月上旬のパターン)

 水温がものすごく下がったとき、バスはいったいどうしているか。静岡県の芦ノ湖でバスが寝ているのを見たことがある。これはバスが本当に寝ていたのか、横になっていただけで目は覚めていたのかは、バスに聞いたわけではないので、はっきりわからない。しかし、確かに眠るように横になっていたのだ。

 芦ノ湖の特別解禁にレインボーを釣りに行ったときにことだ。レンタルボート店の店先に水槽があって、その底に全長40cmぐらいのバスが3尾、横たわっていた。ものすごく寒い日のことで、水槽は店の外に置いてあったから、水面に厚い氷が張っていた。てっきりバスが死んでいると思って店の人に言ったら

 「いや、ちゃんと生きてますよ」

 と店の人が言う。近付いてよく見たら、かすかにエラブタが動いて、呼吸をしていることがわかる。

 「寒いときは、よくあるんですよ。こんなになってても、暖かくなったらちゃんと起きて泳ぎますから、大丈夫なんですよ」

 と店の人。これには

 「水温がものすごく下がると、バスがこういう状態になることもあるんだ」

 とすっかり感心してしまった。おそらくこのときの水槽の中の水温は、ほとんど0度近くまで下がっていただろう。バスの活性がここまで下がることがあるということと、そのバスがまた起きて泳ぎ始める生命力の強さというか、自然のシステムの偉大さの片鱗を見たような気がした。また、いろんな所へ行ってみるものだということを改めて思ったのも事実だ。

 さて、寒くて横になってるバスを釣るのは、どんなアングラーにも不可能だろう。ここでは、そんなバスを釣る方法をお教えしようというのではない。最初にこんな例を出したのは、バスの活性がここまで下がることがある、ということをいいたかったからだ。

 厳冬期のバスフィッシングを考えるうえで大切なのは、どんなことをしても釣れないようなコンディションが現実にあるということだ。ただし、この「釣れないコンディション」というのが問題で、1尾のバスにとっては釣れないコンディションでも、他のバスには釣れるコンディションかもしれない。バスの中にも個体差があるだろうし、エリアによる環境差はもっと大きいだろう。

 ここで誤解しないでいただきたいのは、食う可能性と釣れる可能性は同じではないということだ。厳冬期の湖に食う可能性のあるバスがいたとしても、誰にでも釣れるとは限らない。釣れる可能性というのは、バスが食う可能性プラス、アングラーがそのバスを釣るだけの技量を持ち合わせているとか、そこでちゃんと釣りができるだけの気象条件の日であるとか、そういうことが重なって初めて満たされるものだ。

 いま問題にしている食う可能性とは、そういうアングラーの側の条件を無視して、バスの側だけの食う可能性のことをいっている。真冬のバスゲームでは、湖の地形やその日のコンディションをよく考えて、数少ない食う可能性のあるバスを見付け出すことが大きな問題となる。

 そのための方法は、ここ前項などでも解説してきた。いくら水温が下がっても、その方法自体にかわりはない。というよりも、水温が下がれば下がるほど、いくらかでも活性が高くてルアーを食う可能性のあるバスを探し出すことが決め手になる。その理由は、いよいよこういうときこそ、食う気のないバスは本当にどんなことをしても釣れなくなってしまうからだ。

 これを逆にいえば、食う気のあるバスが見付かったとしたら、それをキャッチする方法は、どんなに水温が下がっても、さほどかわらないということになる。釣り方は、クリスタルSの1/2〜3/4ozのようなヘビーウエイトのスピナーベイトやビッグクランクベイトをスローに引く。これは、バスがいる目の前を正確に通すためだ。ディープクランクは水深3m以上、クリスタルSは1/2ozが2〜3mまで、3/4ozが3〜5mまでなどと、水深に合わせたルアーの使い分けが重要になる。

 もう一つは、ジギングスプーンやフットボールラバージグの1/2oz前後を使ったバーチカルな釣りだ。これらのルアーのサイズはベイトフィッシュに似た一口サイズだ。このあたりのことから、厳冬期に使うルアーは目立たせるための大きさや重さではなく、いかに正確にバスの目の前に持っていけるかが最重要課題だということがわかると思う。

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