田辺哲男の
Thinking Bass Game


No.9 スポーニング直後のステディーゲーム
(5月中旬のパターン)

 スポーニング直後のバスは、スポーニングエリアのすぐ近くのストラクチャーに付いていることが多い。産卵でヘトヘトに疲れ切っているため活性が低く、簡単にはルアーを食おうとしない。これが多くの湖では4月末から5月中旬ごろにかけてのことだ。

 この時期になると、暖かいし天気もよくて水温も十分に上がっているはずなのに、思ったほどバスが釣れない。または、釣れても小型ばかりという現象が起こって、多くのバスアングラーは悩んでしまう。しかし、アフタースポーニングということを考えれば、これは当然の現象なのだ。

 このあたりのことをしっかり理解できていないアングラーは、水温が上がって活性が高くなっているはずだからということで、クランクベイトやスピナーベイトなどのハードルアーを使ってアップテンポな釣りをしようとする。ところがバスの方は、スポーニング直後で疲れ切っているから、そんなルアーにはまったく反応しない。つまり、アングラーの意識とバスの生態との間に大きなギャップができてしまうのだ。

 この時期のバスというのは、特に産卵にかかわるようなアダルトサイズのバスに限定すれば、1年でもっとも釣りにくいシーズンだと言ってもよいだろう。これと同じように、水温が下がり切った真冬のバスも釣りにくいことは釣りにくいが、いるのはわかっているのに食わせられないという点では、アフタースポーニングの、それもスポーニング直後のバスの方が難しいのではないかと思う。

 まずエリアだが、アフタースポーニングの場合は、カバーを中心に考える。これは、プリスポーニングのバスがスポーニングエリア近くの水深の変化している場所に集まったのとは違って、産卵で体力を消耗しているバスは、自分の身を守ってくれるシェルターになるようなものに付く習性があるからだ。アフタースポーニングのバスは、そういうストラクチャーのシェードに入り込んでいると考えれば、まず間違いない。

 このときのストラクチャーやカバーは、スポーニングエリアのすぐ近くの水深2m前後ぐらいまでの場所にある桟橋とか竹杭とかウィードとか沈んでいる石とかブロックとか、バスが身を寄せられるようなものなら何でもよい。

 エリア的な条件は、できればハードボトムで水通しがよく、ベイトフィッシュが集まりやすいような場所なら最高だ。スポーニングエリアのすぐ近くに、このような条件を備えた場所があって、そこに何かカバーやストラクチャーがあれば、最高の狙い場になる。

 そのカバーが例えばウィードなら、そのウィードのシャロー側のエッジから少し中へ入って密度が高くなるあたりを狙いたい。これは、同じようなウィードエリアでも、プリスポーニングのバスがウィードのシャロー側のエッジに付いたのとは対照的に、アフタースポーニングのバスは身を隠すためにウィードの中に入りたがるからだ。こういう現象を見ても、アフタースポーニングのバスはストラクチャー主体に考えた方が正解に近付きやすいということがよくわかると思う。

 釣り方は、活性が低くてなかなかルアーを食おうとしないバスが相手だから、ルアーを見せる時間を長くすることが大切だ。それともう一つ考えないといけないのは、障害物に付いているバスを狙うということで、ピンポイントの釣りになる。そこで出てくる答が、ソフトベイトのライトリグだ。

ライトシンカーでバスの目の前にスローフォールさせて、小刻みなシェイクで食わせる。あるいは、ルアーのゆっくりとした動きで誘う。こういう釣り方に適しているのは、スプリットショットリグやライトジグヘッドリグ、ライトテキサスリグなどだ。ワームはシュリルピン、エコギアストレート、ミニチューブ、パーティーワームなど、4in以下のものを使う。

 スプリットショットリグは、リーダーを短くしたショートスプリットと、長くしたロングスプリットの両方が使える。これはポイントの状況に合わせて使い分けるわけだが、例をあげておくと、障害物をタイトに釣りたいときはショートスプリットの方が使いやすいし、ウィードの中でワームをスローフォールさせたいときはロングスプリットの方が有利だ。

 アフタースポーニングの時期は、スモールベイトが1年のうちでもっともビッグバスに効くシーズンだと言える。この釣りで成功するためのライトリグのセットの仕方、使い方などは次回にくわしく解説しよう。

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