田辺哲男の
Thinking Bass Game


No.18 秋の始まり
(9月下旬から10月上旬のパターン)

 夏のパターンが色濃い季節から、いよいよ秋の釣りに切りかえないといけなくなるのが、9月下旬から10月上旬にかけてのことだ。はっきり下がり始めた水温の影響を受けて、バスの多くはシャローへ入り込むようになる。9月中旬ごろまでは、動いても深場を控えたシャローの狭い範囲に拘束されていたのが、このころになるとクリークチャンネルさえしっかりしていればワンドやクリークの奥の完全なシャローエリアでも釣れるようになる。さらに季節が進むと、シャローの奥深くの岸に近いスポットでもグッドサイズのバスが見られるようになる、というのがこのころのバスの行動パターンだ。

 平均的な湖のバスの行動を追うと、9月中旬ごろまでは一時的に活性が上がって活発にシャローに上がることがあっても、そのエリアは例えば岬なら、ディープウオーターに面した岬の先端付近のディープ隣接部分など限られていたはずだ。それが10月に入るころになると、次第に岬の中間点でもバスが釣れるようになる。さらに季節が進めば、岬の付け根付近のワイドシャローでも釣れるようになる。こういう現象がはっきりとしてくると、そろそろ秋も本番だなということで、頭の中を切りかえないといけない。

 釣り方は、ものすごく簡単にいえば夏にくらべてとてもイージーになる。少し前までは、日によって活性が高くなって簡単にハードルアーのただ巻きで釣れることがあっても、またすぐに釣りにくい状態が戻ってくるのが普通だった。それが秋本番になるに従って、バスのいるエリアに入ることができさえすれば、釣りやすいのがあたりまえになる。言い方かえれば、秋のバスは速いルアーでも追うのが普通の状態で、何か理由があるときに限ってスローになると考えればよいわけだ。ただ、あまりにもエリアが全体的なので、見付けたり絞り込むのが困難になるだけだ。

 このようなバスの行動の変化は、シャローも含んだ湖全体の水温が下がることと、ベイトフィッシュの群れがシャローのストラクチャーの上へ入り込むことで起こる。つまり、このころにはバスもベイトフィッシュもディープからシャローの全域にいられるようになるわけだ。

 バスの多くは群れを作ってクルーズするようになる。このような群れはベイトフィッシュを追って行動し、沖寄りのシャローのウィードエリアなどの広い範囲にまで展開する。このようなバスを釣るには、バイブレーションプラグかスピナーベイトが効果的だ。

 ラトリンジェッターなどのバイブレーションプラグは、ウィード上の広い範囲をスピーディーに釣るのに強く、結果的にこの時期の数釣りに強いルアーだと言うことができる。ただし、バスの釣れ方は大小入りまじった状態になることが多い。グッドサイズを狙って釣るには、釣れ方の微妙な変化の中からスポットを絞り込む能力が必要だ。レギュラーサイズのバスがいるエリアより、さらにシャローのスモールポケットとか、さらにアウトサイドのストラクチャーの外側とかを狙ってみる。単発でも、ランカーサイズの可能性が見いだせるはずだ。

 スピナーベイトは、この時期にバスのサイズを絞って釣るにはもってこいのルアーだと言える。クリスタルS1/2ozや3/4ozなどのダブルウイローリーフタイプの強いアピール力を持ったスピナーベイトが特に効果的だ。

 スポット的には、メインレイクやそこからつながるクリークチャンネルのやや水深のあるミドルからディープにかけてのエリア内がよく、意識的に数を避けた釣りでグッドサイズが反応してくる。たとえ水深が3〜4mあっても、スピナーベイトのブレードのきらめきは、バスを強く引き付けて、上がってこさせてしまう。いわゆるスローロールが本当の威力を発揮し始めるのが、このころからのことだ。

 いずれの釣り方でも、よりグッドサイズのバスを確実にキャッチしようと思ったら、バスがいる広いエリアの中から、よりベターなスポットを絞り込まなければならない。そういったスポットは、シャローの沖側の先端とか、ウィードエリアの先端とか、飛び出した場所に比較的多いというのがこの時期の原則だ。

 これらとは別に、秋本番になるとマリーナや港の一番沖寄りのストラクチャーが復活するという現象も見られるようになる。こういったスポットでは、ビッグサイズのワームのテキサスリグをストラクチャーに対して正確に入れてやるだけで、ビッグサイズのバスがバイトしてくる。

 こういう釣れ方は、最初のうちは特定のスポットで単発的に起こるだけだが、それが次第にあちこちのスポットに広がっていく。季節が進むにつれて釣れ方も安定するようになり、最終的にはシャローのストラクチャー全体で安定して釣れるようになる。

 ストラクチャーに付いているバスは、中層にサスペンドしていることが多い。これはシャローのストラクチャーに限ったことではなく、あらゆるエリアで同じことが言える。ベイトフィッシュがサスペンドしている中で、秋のバスの多くはサスペンドしているのが普通なのだ。

 その中でも、シャローのストラクチャーに代表されるようなマンメイドの杭や桟橋でサスペンドしているバスをキャッチするには、風のあるときは小さめのスピナーベイト、クリスタルSの1/4ozや3/8ozクラスがとても強い。風のない状態のときには、ジグヘッドリグのフォーリングがよく効く。ジグヘッドのウエイトは1/8oz、ワームはサスペンチューブなどのチューブベイトか、パーティーワーム、ボディーシャッドなど小型のものが中心になる。

 風が吹いてベイトフィッシュが岸寄りに寄せられているような状態のときは、超シャローのアシ原にでも入り込むバスがいて、これが意外と狙い目になることもある。秋のアシ原やサンドバンクなど、それまでバスが入り込んでいなかったウルトラシャローのエリアというのは、多くのアングラーが見逃しやすいスポットの一つだ。

 これら多くの可能性の中から、バスアングラーはよりよいパターンを絞り込まなければならない。その点では、秋というのはよく釣れる反面、本当の正解にたどり着くには難しい季節でもある。そのことを忘れなければ、きっとすばらしい釣りができるだろう。

「田辺哲男 Bassing Pattern Book」
単行本/タックルショップで好評発売中1500円
バスフィッシングのパターンを田辺哲男プロが徹底解説した単行本です。Bassingかわら版に掲載されているテキストを中心に、豊富な写真とイラストでバスのシーズン別のパターンを詳しく解説しています。この本は全国の書店、タックルショップで販売されているほか、インターネットのオンライン通販ショップSORAIRO HOURのホームページで買うこともできます。定価は1800円です。

田辺哲男Bassing Pattern Bookデータベースへ
Members Only