田辺哲男の
What's Bass Fishing?


No.5 秋の終わりから冬、そして春へ
(12月から3月のパターン)

 バスフィッシングにおいて、季節が秋から冬へかわるころというのは、本当に難しいシーズンだ。日本の平均的な湖では、12月末から1月前半ごろが、ちょうどこの時期にあたる。それまで、活性は下がり気味ながらもなんとか釣れていたバスが、まるで姿をかき消すように急に釣れなくなる。1月後半から2月前半の真冬にくらべても、このころの方がはるかに難しいと言うアングラーが少なくない。

 この項のメインテーマは真冬のパターンなのだが、それを説明する前に、秋の終わりから冬の始めにかけて、なぜこういうことが起こるのかを考えてみよう。それによって、真冬のバスの付き場とか釣り方を考える前提としての知識が得られると思う。

 秋の後半になると、バスは地形の変化に付くようになる。いわゆるストラクチャーフィッシングが必要とされる時期となるわけだ。この地形がどのようなものかというと、ディープエリアが近くにある場所で水深が変化しているような所、具体的には沖のディープエリアに近い所にあるハンプとか、ワンドの中ならディープエリアのすぐ横にある急深のロックエリアとかティンバーエリアに集まるようになる。ストラクチャーとしては、できるだけ急激な変化を伴うことが望ましいそして次第に季節が進むと、そういった場所の中でも、より居心地のよい場所でしか釣れなくなる。つまり、釣れるスポットがだんだんと減っていって、最後には数少ない特定の場所しか残らないわけだ。

 それと同時に、水温がどんどん下がっていくわけだから、それまでのようにテンポの早い釣り方だけで簡単に釣れるということは少なくなる。ラバージグやテキサスリグ、キャロライナリグ、さらにはジギングスプーンなどの出番が多くなるというのが、このころの全般的な傾向だ。

 バスが釣り難くなる原因というのは、大きく分けて二つのことが考えられる。そのうちの一つは、バスの活性が下がって、ルアーを食わせるのが難しくなることだ。これは、あらゆる季節に起こる可能性があるが、秋から冬に向かっては、季節自体が水温の低下というバスをスローな方向に向かわせる要因をはらんでいる。

 それと、もう一つの原因は、何らかの理由でバスが付いているスポットを絞り込むのが難しくなることだ。これはごく単純に考えれば、バスが湖のいろんな場所で釣れるときはスポットを見付けるのは簡単で、その逆のときは難しいということと、バスの移動が激しいときはスポットを見付けても長続きしないから、安定して釣り続けるのが難しいということがある。

 こういう条件にあてはめて考えると、秋の終わりから冬にかわるころというのは、バスが釣りにくい二つの原因を両方とも備えていることになる。バスの活性が下がっていく時期で釣り難くなるのと同時に、釣れるスポットがだんだんと少なくなっていく。この両方に、アングラーは同時に対処しないといけないわけだが、えてしていつの間にかバスを見失ってしまうことが多い。

 これが真冬になると、釣れるスポットは多くはないが、決まった所で釣れ続くようになるし、そのスポットを探し出す条件も、秋の終わりから冬の始めごろほど微妙ではなくなる。つまり、難しいなりにも解決方法がなくはないわけだ。アングラーの方も、真冬は難しい時期だと始めから思っているから、それなりに覚悟を決めて問題を解決しようとするはずだ。

 ところが、これが秋の終わりごろだと、まだしばらく前までは比較的簡単に、あそこでもここでも釣れたのに、ということが頭の中にあるから、そのときの釣りから離れられないでいる。実際は釣り方がスローになり、釣れるスポットも少なくなっているのに、なかなか気持ちの上でその変化についていけないということから、アングラーのイメージと実際の季節との間に大きなギャップができてしまう。

■終わったスポットは思い切りよく棄て去る

 秋の終わりから冬の始めごろは、一瞬の油断がバスを見失う原因になる。一度見失ったら、なにしろ釣るのが日に日に難しくなり、釣れるスポットも少なくなっていく時期だから、もう一度見付け出すのは簡単なことではない。というわけで、釣れない悪循環にはまりこんでしまう。ここまでの説明でおわかりいただけたと思うが、秋の終わりから冬の始めの時期には、誰もが陥りやすい大きな落とし穴が仕掛けられていているのだ。

 この落とし穴に落ちないですむ方法は、次に何が起こるかを常に考え続けることだ。1週間前に釣れたスポットをチェックしてみるのはもちろん必要なことだが、特にこの時期のバスフィッシングでは、そのスポットでいつまでも釣れ続くという考えは持たない方がよい。先にも書いたように、釣れるスポットがどんどん少なくなっていく時期だから、そのことをしっかりと認識して、終わったスポットは棄てていくことが必要だ。

 釣り方は前項でも説明したが、12月後半ごろになるとバスは水深が変化した場所の落ち込んだ先にある岩とか漁礁のようなストラクチャーにタイトに付くようになる。この状態のバスを釣るためには、ラバージグやテキサスリグなどをストラクチャーにきっちりプレゼンテーションしてやると同時に、ある程度時間をかけて、ボトムを取りながらていねいに動かしてやる必要がある。

 このような方法でチェックし、数少なくなりつつあるスポットを絞り込んで釣っていくわけだが、このときスポットをきっちり押さえてバスを釣り続けることが、真冬の釣りにつながる。つまり、秋の終わりから冬の始めにバスを釣っていて、最後に生き残ったスポットが真冬にも非常に有望なスポットになるか、あるいはその近くて真冬にバスが集まるスポットを発見できる確率がきわめて高いのである。

 さて、12月の終わりごろのバスは、水深の変化した場所の深い側にあるストラクチャーに付くケースが多いということを書いたが、その後のバスフィッシングはどのように考えればよいのだろうか。これはつまり、もっと寒くなるのだから、さらに深い場所とか沖寄りのストラクチャーを狙えばよいのかという問題だ。

 結論から先に言うと、決してそのようなことはない。確かに真冬のバスは深い場所にもいるが、それだけで真冬のバスフィッシングが成立すると考えるのは間違いだ。それとは逆に、条件のよいシャローを控えているということが、絶対に無視できない要素になる場合がきわめて多いとう事実がある。

 真冬のバスの行動を理解するには、三つのタイプに分けて考えるのがわかりやすいと思う。まず、水深のあるディープエリアから出ることなく、そこで冬を越すバス。次に、ディープとシャローを行ったり来たりしているバス。最後に、条件のよいシャローにずっといて、そこで冬を越すバス。水温が1年間で最低になる真冬でも、これら3タイプの行動パターンが実際に存在するのである。

■3タイプに分かれる真冬のバスのパターン

 真冬のバスフィッシングにおいて、ずっとディープにいるタイプのバスを釣るのは、もっとも難しいことだが、もっとも多くのバスがこのタイプのエリアにいるはずだ。ただ、ルアーへの反応が鈍く、口を使う確率は高くない。なぜなら、このようなエリアは水温変化も小さいが、水温が上がることも少ないからだ。

 特に水質がクリアなレイクでは、かなりのディープまでバスは落ちている。逆に濁り気味やマッディーウオーターでは、バスのタナはそれほど深くはならない。太陽光線が届かないようなところにはベイトフィッシュもバスもいない。

 バスがこういう冬の過ごし方をするのは、岸寄りにシャローがほとんどないような場所の急なブレークの下にいる場合が多い。また、その場所が風裏などで温度変化がほとんどなく、水の動きも鈍いというような条件がそろっていることも必要で、このようなスポットはリザーバーなどに多い。

 これらの環境がそろっていて、さらにベイトフィッシュが豊富なスポットなら、バスはその場所から大きく移動することなく冬を越すということがあり得る。具体的には、リザーバーのメインレイクに突き出た岬の先端に近い風裏で、ボトムに岩などのストラクチャーがあるような所だ。

 こういうスポットのバスを狙うには、二つの方法がある。まず一つは、バスがボトムのストラクチャーに付いていて、その上に乗っかっているか、または横にサスペンドしているような場合。このときは、ラバージグやジギングスプーンなどを使ってバスの目の前でルアーをアクションさせ、リアクションバイト的な食わせ方をする。これはバスの活性が比較的低いときの狙い方だ。

 これと同じ場所でバスの活性が高くなるのはどういうときかというと、ベイトフィッシュの群れが中層にいて、バスがこれに付いてサスペンドしているようなときだ。真冬でもバスはかならずボトムにいるとは限らず、ベイトフィッシュの群れが中層にいたりするとサスペンドすることがある。近くにシャローがないディープエリアでこのようなことが起こると、バスはストラクチャーの上にサスペンドする状態になる。場合によってはストラクチャーから1m以上の離れてサスペンドしていることもあるようだ。また、多くのリザーバーでよくあるような岸から続く急な落ち込みの先にいるバスは、急傾斜の壁沿いにサスペンドする状態になる。

 こういうときはジギングスプーンなどをキャストするだけで、フォーリング中にバイトしてくる。それも単発ではなく、同じスポットで立て続けにバイトしてくるということを真冬に何度も経験している。そして、こういう釣れ方をするときはかならずベイトフィッシュがいて、近くにバスが上がれるようなシャローがないスポットであるという共通する条件があった。

 ただし、ディープにいるバスがこういう釣れ方をするからといって、こんなのをいつでもあてにできると思ったら大間違いだ。真冬にこんな釣れ方をするのはむしろまれなことで、たいてはストラクチャーべったりの釣りになる。そのためスポットへのアプローチにも、ルアーの扱い方にも限界に近い精度が要求される。このあたりが真冬にディープエリアにいるバスを釣るのが難しい理由だ。

■比較的釣りやすいシャローへ動いたバス

 次に2番目のタイプ、ディープとシャローを行ったり来たりしているバスについて考えてみよう。このタイプは基本的にディープにねぐらがあって、コンディションのよいときにベイトフィッシュとともにシャローへ入るという行動をしている。だから、少なくともシャローにいるときはエサを食う気があるし活性も比較的高い。真冬にトップウオーターで釣れたりするのが、このタイプのバスだ。

 こういうバスが入り込むシャローがどんな場所かというと、少しでも水温が上がりやすい場所というのが絶対条件になる。だから、冷たい北風が当たり難くて、日当たりがよい場所というのが最低条件で、さらに加えて底質が黒っぽい小石などといった暖まりやすい条件を備えていればなおよい。そして、そのすぐ横にディッチやクリークチャンネルのベンドなど、急深のストラクチャーが存在することが条件だ。

 ここにいるのはエサを食うためにシャローへ入っているバスだから、コンディションがよいときにはトップウオータープラグにもバイトがある。ただし、これはちょっと極端な例で、通常はシャッドプラグやバイブレーションプラグ、スピナーベイトなどをスローリトリーブする方法が有効だ。シャッドプラグは2m前後の潜行深度のシャッドラップ、バイブレーションプラグはウエイトのあるラトリンシャッター、スピナーベイトはクリスタルSなどの3/8oz前後などを選ぶのがよいだろう。動かし方はいずれの場合も、あくまでスローリトリーブを心掛けることで、このときにきれいにアクションするルアーを選ぶことが大切になる。

 では、このバスがディープにいるときは、どうすればよいのだろうか。これについては成功するのはまれだが、シャローでの釣りが成立するエリアの近くのディープにあるピンポイントで、バスの群れを発見することがある。こういうときは、ホプキンスなどのジギングスプーンやガンターフットボールジグなどを使ってバーチカルに狙うのが効果的だ。

 ジギングスプーンの動かし方は、上下にアップダウンを繰り返す。このときバスのバイトは、ルアーのフォーリング中にくることが圧倒的に多い。ただし、ディープだけで冬を過ごすバスの釣り方の所で書いたようなサスペンド状態とは釣れ方が異なる。バスはボトムべったりか、またはボトムにごく近い所にいるようで、ルアーの着底寸前にバイトがあることが多い。

 バスのディープからシャローへの動きと同じように、縦のストラクチャー沿いに上下に動くという現象もある。真冬のバスがこのような動きをするのは、そのストラクチャーがある特定の条件を備えている場合に限られるようだ。その条件とは、ストラクチャーの規模が大きいことと、もう一つはその近くのシャローの水深が例えば3mなら、ストラクチャーの浅い部分が3mより上までなくてはならない。

 ここでもバスは、ベイトフィッシュの群れがストラクチャー沿いにサスペンドしているのにつられて中層に浮くという行動をする。つまり、この状態のときはエサを食う気があり、いくらかでも活性が高いと考えられるわけだ。

 このときバスがサスペンドする水深は、そのストラクチャーが水深何mの場所にあるかにかかわらず、まわりのシャローの水深まで浮いている確率が高い。先にあげた例で言えば、水深3mの所にサスペンドしている確率が高いのである。これは特にベイトフィッシュが多くて活発なほど、このあたりの水深にバスが多くサスペンドしていて、そのタナでルアーにバイトしてくる確率も高いようだ。

■冬のシャローで大切なヘビーカバーの存在

 最後に残った第3のタイプ、シャローだけで冬を越すケースだが、一般のアングラーは意外に思うかもしれないが、湖には少なからずこういうバスがいる。真冬でもシャローだけで過ごすバスがいるエリアというのは、まず水深が0.5〜1mの範囲内で、北からの波風をさえぎる風裏にあり、しかもヘビーカバーがあるような場所という条件を完璧にそろえている場所に限られる。特にディープが住みづらいマッディーウオーター系のレイクや池ではこの傾向が強い。

 ここでヘビーカバーという言葉が出てきたが、真冬のシャローでバスが付くためのヘビーカバーとは、その中に入った水が簡単に動かないようなカバーという意味だ。つまり、ある程度の密度のあるブッシュや枯れアシ、生い茂った草、テトラ、石積みなどのように中に空間があって、しかも外部に対して遮蔽効果の大きなストラクチャーがよい。これとは逆に、コンクリートの塊でできた防波堤ようなストラクチャーは、バスが中に入り込めるような空間がないので、真冬のシャローでバスが居続けるにはふさわしくない。

 それでは、先にあげたようなストラクチャーの中でバスはどんな状態でいるのかと言うと、狭くて水が動かないような空間に入り込んでいると考えればよい。水温が少しでも上がりやすいシャローで、自分のまわりの水が動きにくい、そういう場所が真冬のバスには快適なのだ。そして、この条件はベイトフィッシュなどにも通じるので、バスはその場所から動くことなくエサを取ることが可能だと考えることができる。

 こういったスポットのバスを釣るには、どういう方法がよいのかというと、狭い穴の中に入れやすいような、やや重めのソフトベイトリグを使うのが正解だ。ラバージグの3/8〜1/2oz、テキサスリグの3/16〜1/4oz、ジグヘッドリグの1/8ozなどで、テキサスリグとジグヘッドリグはいずれもストレートワームや細かいアクションの出るすらすミノーなどのシャッドテール系をセットする。当然のことだが、狭い穴の中に入れるためには、キャロライナリグ系はよくない。

 バスはアングラーが想像するよりも狭い穴に入っている。そして、その中でエサを食おうとする場合、追いかけて食うだけの元気はないから、あわてずにゆっくりと見ながら食おうとするようだ。だから、ワームの動かし方も、ストンと穴の中に落として、次に同じ場所でトントントンと5回ぐらいは動かして、ここにワームがあるぞとバスに教えるようなつもりで食わせるのがよい。

 ここまでの説明で、真冬のバスのパターンがほぼおわかりいただけたと思うが、まだ一つだけ説明していないことがある。それは、これまでの説明の中に何回も出てきた「条件がよいとき」とか「コンディションがよいとき」というのが、具体的にはどんなときなのかということだ。

■秋の終わりごろよりも真冬の方が簡単

 真冬にバスの活性が下がるのは、もちろん水温が低くてバスの動きが鈍くなることが最大の原因だ。ということは、少しでも水温が上がればバスの活性も高くなるはずだが、それでは実際にバスがいるスポットの水温が上がるのは、どんなときなのだろうか。

 アングラーが真冬に釣りをしていて、少しでも暖かいと感じるのは、まず天気がよくて風もなく、太陽が照りつけているときだ。バスにとってもこれは同じで、晴天、無風というのが必要条件になる。寒冷前線の通過直後は晴天でも気温が一気に下がりすぎるので、できれば晴天が2、3日続いた後なら最高である。気温が日中に上がるということを考えれば、午前よりも午後の方がよくて、それも日が傾いて気温が下がり始める前の午後3時ごろがもっともよいということになる。

 晴天という条件と無風という条件のうちのどちらが優先するのかというと、晴れていて風がある日よりは、曇っていて風がない日の方がよい。だから、何日か晴天無風が続いた後に曇っても、風がなければまだバスの活性は下がっていない可能性がある。逆に晴天は続いても風が出て波が立てば、一気に活性が下がる確率が高い。これと同じ理由で、雪が降るような天気でも風がなければ意外とバスの活性が高いことが多い。

 バスフィッシングにおける真冬とは、平均的な湖で1月後半から3月前半までの2月を中心とする約2カ月ほどのことだ。この間のバスは、寒さを避けるというはっきりとした目的を持って行動しながらも、エサを食うということを忘れないでいる。だから、これらのことを基準に考えてパターンを煮詰めていけば、釣れるバスを見付けるのは不可能なことではない。その点では、秋の終わりから冬の始めごろの難しさにくらべると、難しさの質がかなり違っていて、本当に冬というシーズンを理解しているアングラーにとっては、やるべきことをきっちりとやれば決して釣れないシーズンではないのである。

 さて、冬が終わればかならず春がやっている。バスフィッシングのパターンを考える上で、春を意識する必要が出てくるのは、平均的な湖でおよそ3月後半ごろのことだ。

 春の最初のバスの動きから始まったパターンの解説も、いよいよ大詰めにさしかかった。そこで、本書を締めくくるにあたって、春の始めに起こるビッグパターンを紹介しておきたいと思う。そのパターンとは、バスが冬のエリアから春のエリアへ動こうとするときに、シャローへの上がり口の最初のところで起こるサスペンドジャークベイトへのアタックだ。

 春先にサスペンドプラグを使うパターンが日本のアングラーたち知られて、もうかなりの時間がたつ。今ではすっかり有名で、メジャーな釣り方の一つになったと言ってもよいぐらいだ。

 この釣り方がはまったときの威力というのは相当なもので、1年を通じても数少ない超ストロングパターンとなる。しかもバスのナチュラルな行動に合わせた釣り方だから、よほど特殊な環境の湖でない限り、いつかはどこかで起こる確率が高い。トーナメントの優勝パターンとなることもしばしばで、93年にアメリカ・ケンタッキー州のケンタッキーレイクで開かれたB.A.S.S.インビテーショナルトーナメントでは、この釣り方が見事にはまって、日本人として最初のウイナーになることができた。

■B.A.S.S.を制した春のサスペンドミノー

 この釣り方がもっとも強烈な威力を発揮するのは、先にも書いた通り、越冬を終えたバスが春に向かってシャローへ入り込もうとする、まさにその上がり口の所にビッグサイズばかりが集まったときだ。そのため、本当に効くのは、特定のエリア内のさらに狭いスポットの中だけで、しかもそれほど長くない期間に限られる。

 ルアーはスポットの水深とベイトフィッシュのサイズに合わせて、シャッドラップ、シャローラビット、ロングA、ラトリンログ、アユチュピなどのサスペンドタイプか自分でサスペンドに改造したものを使う。最初からサスペンドタイプのルアーでも、ラインとの相性などによってサスペンド状態を微妙にチューンする必要も出てくる。その場合は両面テープ付きの板オモリを適当な大きさに切ってルアーの腹側に貼ればよい。

 ルアーの動かし方は、強くアクションさせては止めることのくり返しだ。この時期のバスは、動きのあるものには反応してくるのだが、ワームでフッキングできるほどのバイトには至らないケースが多い。そこで、ジャークベイトなら食ってくれば掛かるというわけだが、このときにバスにバイトさせるための要素が二つある。

 まず一つは、まだ水温が低い時期のスローなバスを引きつけるための強い刺激。これがジャークベイトの強いアクションにあたる。だから、動かすときは強過ぎると思うぐらい強めに動かすことが必要だ。

 その次に、ルアーの強いアクションでその存在に気付いたバスに食うための間を与えてやること。これがルアーを止めているときの間にあたる。ルアーに気が付いても、早い動きにはついてこれないスローなバスをルアーを止めてやることでバイトさせるのだ。そのためには、水中で静止するサスペンドタイプでなくてはならないわけで、バスがルアーにアタックするときのイメージは、頭上で止まっているルアーにバスが下からゆっくりと上がってきて食いつく感じだ。

 冬から春に向かって釣り方を切りかえるタイミングは、冬にシャローとディープで釣っていたバスのうち、シャローで釣れるバスが目立って増えてきたら、いよいよ春のごく初期のパターンを意識しなければならない。このときに早めに行動して、バスの最初の動きをとらえることができるかどうかが、ビッグパターンに出合えるかどうかの分かれ目になる。

 これまでにも言い続けてきたことだが、バスフィッシングのパターンを考えるときに大切なことは、次に何が起こるかを予測して早め早めに行動を起こすことだ。この原則さえ忘れなければ、1年間常にバスを追い続け、バスフィッシングの本当の面白さを味わい続けることができる。このことを肝に銘じて、バスという偉大なるライバルとの知恵くらべを満喫していただきたい。

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