■4回目のバスマスタークラシック出場決定
9月16日に終了したB.A.S.S.エリートシリーズで2007年のトータル成績37位に入りバスマスターズクラシック出場を決めた桐山孝太郎プロが10月16日に帰国した。桐山プロは02年から04年にかけて3年連続でクラシックに出場。今回はそれに続く4回目のクオリファイである。
実はBassingかわら版では、98年11月にカリフォルニア州レイクシャスタで開催されたB.A.S.S.ウエスタンインビテーショナルトーナメントで桐山プロが10位に初入賞を果たした直後にインタビュー記事を掲載している。今から実に9年前のことで、桐山プロが日本のバスフィッシングメディアに登場したのは、これが初めてであった。その後のアメリカのトーナメントでの活躍は、多くのメディアが伝えた通りで、日本選手の躍進と歩調を一にしている。
その桐山プロが、今回の帰国にともない滋賀県琵琶湖で釣りをすることになった。予定は10月19〜21日の3日間。本場アメリカのバスマスターが秋本番の琵琶湖をどう攻略するか。その行動記録をお届けする。
■October 18, 2007 Before fishing day in Lake Biwa 到着即救急病院へ
ひさしぶりに関東の実家に戻った桐山プロは、ゆっくりする暇もなく2日後の18日には関西へ移動。スポンサーとの打ち合わせをすませた後、夕方早い時刻に琵琶湖へ向かった。琵琶湖での予定について桐山プロに聞いたところ、「3日ぐらいは釣りをするのかなあ!?」という返事。琵琶湖入りした段階では、各スポンサーの取材やテストの予定が3日分は入っているが、その後はよくわからず、今は3日の予定だけど、なりゆきで4日以上になるかもしれないとのこと。行き当たりばったりは、いつもの行動パターンらしい。
午後6時過ぎにマリーナホテルリブレにチェックイン。その足で向かったのは、なんと救急病院。自宅で食べたアジの小骨が喉に刺さったのがチクチクしっぱなしで、関西へ来てからもいろんな人から「ごはんをそのまま呑み込め」「おもちを食べてみたら」などと言われて試してみたが、何をやっても取れず、とうとう病院へ行くことになってしまったのである。
ところが病院でも、内視鏡まで使って小骨が刺さってる場所は確認したが、喉の奥まで届く適当な器具がなくて取ることができず、専門の耳鼻咽喉科へ行くことを勧められてしまった。これってまるで、でっかい見えバスがどうしても釣れないのと同じ状態ではないか。そんな風に嘆いていても仕方ないので、そのまま3時間遅れで夕食と打ち合わせへ。翌19日、琵琶湖でのバスフィッシング初日は午前6時スタート、喉に刺さった小骨のことは釣りながら考えようということに決定した。この打ち合わせ中に桐山プロは、スタッフから「予定を狂わせる鰺山骨太郎」と呼ばれていた。
■October 19, 2007 1st day in Lake Biwa 雨のち雨のち雨
琵琶湖のバスフィッシング初日の10月19日は朝から雨。案内役の杉戸繁伸プロと桐山プロの会話。
桐山「これはトップウオーターで釣れそうだねー」
杉戸「バズベイトもいいかも」(なぜか東京弁)
2人の作戦会議は取材そっちのけでバスが釣れる方向へどんどん進んでいく。それを聞いていたディレクターから、さっそくNGが出る。
D「だめですよ。今日の撮影はワームだって言ってるでしょ!!」
桐山「スピナーベイトはどうなの?」
杉戸「いいねえ」
D「ダメダメ。スピナベもダメだって!!」
桐山「トレーラーフック付けときゃいいじゃん」
杉戸「それでOKじゃないの」
D「そういうもんじゃないんだって!!」
すべてがこんな調子。このまま2人を放し飼いにしておくと何を始めるかわからないので、ディレクターが同船して指示を出すことになった。
取材は予定よりちょっと遅れて午前6時30分頃スタート。雨はどんどん強くなって、昼前には土砂降り。止み間のない強い雨に、ビデオカメラを回せなくなることもしばしばで、最後は取材どころではなくお昼で中止。午後は2人の対談の撮影にあてることになった。
対談で杉戸プロから琵琶湖のバスフィッシングについて聞かれた桐山プロは、「この湖はウィードがすごくたくさんあるでしょ。ウィードは地形だと考えて、それにプラスする何かを見付けないとバスは釣れないと思うね」と答えた。たった半日の釣りで導き出した対琵琶湖戦略である。
2時間以上に渡った対談のもようは、ビデオにばっちり収録することができた。発売間近の新製品や来年のフィッシングショーに向けて開発中のプロトモデルも、もちろんばっちり。「こんな面白い話が撮れたのは、雨のおかげかもしれないねー」と、これはスタッフの正直な感想。公開することができれば、桐山プロと杉戸プロから琵琶湖のバスアングラーへのすてきなプレゼントになることだろう。どのような方法で公開するかは現在検討中。できるだけ公開する方向で努力するとのことなので、どうかお楽しみに。
■October 20, 2007 2nd day in Lake Biwa 自分で探して釣りたい
琵琶湖のバスフィッシング2日目の10月20日は典型的な秋の雨後の晴天、強風。西風がどんどん強くなって、午後は気温が急低下。たった1日で季節が1カ月分ぐらい進んだ感じがする。
午前中は北湖の数釣りパターン。ミノーとライトリグで手堅くヒットシーンを押さえ、昼食後は南湖で大型狙い。こうなるとなかなかバイトがない。杉戸プロの案内で南湖のウィードエリアを釣り続けた桐山プロは、ついにがまんの尾が切れた。
桐山「なーんか変化がないね。ウィードエッジとかチャンネルはないの?」
杉戸「このウィードでみんな釣ってるからねえ……」(本日もなぜか東京弁)
桐山「もう、がまんできない」
杉戸「自分でチェックしてみる?」
自分で魚探をかけてエリアチェックする桐山プロ。南湖西岸からスタートして、はるか沖のウィードが薄いエリアを越えて、再びウィードの塊が出てくるまで、西側半分を一通りチェック。次にウィードが薄いエリアの両側を何回も行ったり来たり。
桐山「こりゃー難しいわー。短時間で簡単に絞り込むのは無理だね」
延々と続く広大なウィードフラット。はっきりしないウィードエッジ。その難しさに気候の急激な変化が上乗せされる。何カ所もエリアを移動しながら、杉戸プロに次から次へと質問を浴びせかける桐山プロ。その主眼は、なぜその場所で釣れるのかということ。それに対して杉戸プロが答える。
杉戸「なぜだかわからない。去年はあの岬の向こう側で釣れてたのに、今年はこっち側で釣れてる。そのエリアの違いは、どれだけ調べても僕にはわからない。ただ、わかるのは去年はあっちで、今年はこっちだということだけ」
桐山「だったら、どうやってたどり着いたの?」
杉戸「それは、僕らみたいなガイドは1年中ずっと琵琶湖で釣り続けてるから、無駄な時間も使いながらそういう答にたどり着いてるわけ。もし簡単にわかるんだったら、すぐにボートが集中して釣ってしまうから、正解であっても正解じゃなくなってしまうこともあるかもしれない。そういう正解のエリアや釣り方がたくさんあって、その中から今はここがベストだと、言えるのはそれだけ」
桐山「簡単な湖じゃないのはよくわかるよ」
杉戸「僕が楽しみにしてたのは、そこで桐山が何か見付けてくれるかなと、そういうことも期待してたわけ」
桐山「そうかあー。だったら釣れてるエリアへ連れて行ってよ。そこで釣りながら考えよう。そうでもしないと、明日までに正解にたどり着くには、時間が足りないかもかもしれないね」
そんなことを話しながら、いろんなルアーを試し続けていると、時間はあっと言う間に過ぎてしまう。日が傾くにつれて、寒さが半端ではなくなってきた。明日はさらに寒くなって、最低気温が10度以下になる予報が出ている。
はたして桐山プロは正解にたどり着けるのか。琵琶湖のビッグバスは釣れるのか。杉戸プロはプロフェッショナルガイドの名誉を守ることができるのか。残すところあと1日。3日やって釣れなかったらシャレにならない。最終日はあまり制約なく釣ることができるとのことだから、可能性は十分あるはずだよね。たのんまっせ、桐山プロ、杉戸プロ!!
■October 21, 2007 3rd day in Lake Biwa 北へ行きゃいいじゃん
琵琶湖のバスフィッシング3日目の10月21日もあいかわらず西からの強風が吹きまくりで気温はさらに低下。それでも北湖へ向かう桐山プロと杉戸プロ。案内役の杉戸プロが得意の北湖東岸はとても釣りにならないので、まずは西岸沿いに北上。「南湖が激タフなんだったら、北湖へ行きゃいいじゃん」というのが2人のとりあえずの判断らしい。
ミノー主体に釣っていくと、前日と同じくいい感じでヒットが続く。大雨後の冷え込みと強風のダメージは、北湖では見られない。桐山プロが10キャスト連続でヒットさせるシーンもあった。ルアーはスクワレル。こういうスピーディーな釣りをさせたら、さすが本場のバスマスターだ。
ただし、サイズが40cmに届かず、いまいち。ここでどうするか、桐山プロにまかせてみたところ、シャローへ行こうと言う。普通だったら、ミノーで数釣れたエリアの沖側のウィードエッジやブレイクラインをチェックするところだが、桐山プロのリクエストは何もない砂浜のシャロー。杉戸プロは「えーっ!! こんな場所でー!?」と意表を突かれまくり。
桐山プロは白いボトムがまる見えの砂浜のシャローの中に点々と黒っぽく見える小さなウィードパッチをノーシンカーリグで1カ所1カ所ていねいに狙っていく。杉戸プロは釣れそうな気がせず、ボートの後ろでダレ気味。「どこまでやるのー?」と言いたそう。南湖の広大なウィードエリアで釣ってたときと立場が逆転した。
水深50cmあるかないかのウィードパッチから桐山プロが引き出したのは、軽く1kgを越えるプリプリ、グッドコンディションのバス。ほかにミスバイトが2回。杉戸プロもスピナーベイトで同サイズをキャッチ。
杉戸「へえー、こんなパターンがあるんやねー」
桐山「バスは黒っぽくなったウィードの上に隠れてベイトを待ち構えてるの。それを探すには、底が白っぽい所でないとダメでしょ。だから砂浜の前へ来たんだよね」
杉戸「それにしても、1mもないシャローで釣れるとはねえ。まわりにボートが1隻もいないもんね。誰も釣れるとは思ってないよ」
桐山「だけどバスはいたでしょ。こういう場所へシャッドの群れが入ってくるのをバスが待ち構えてるパターンがあって、沖で釣ってるときに岸の景色を見て、それに気が付いたから来てみたんだよね」
杉戸「ちゃんとパターンとしてあるんやね」
そんなことをやってる最中、取材艇にトラブル発生。風はますます強く吹きつのる。かわりのボートを待って、遅い昼食後は南湖で2時間ほどやってみたが、めぼしい成果なく3日目の釣りを終了した。
■October 22, 2007 After fishing day in Lake Biwa 琵琶湖ガイドに囲まれて
1年のうち8カ月はアメリカ全土を走り回ってバストーナメントに終われている桐山プロにとって、日本へ帰国するチャンスはそう多くない。普通は年に一度、フィッシングショーに合わせて帰国し、その前後にスポンサーとの会合やいろんな取材を一気にこなしている。今年はそれに加えて、B.A.S.S.エリートシリーズが終わった1カ月後の10月に帰国し、好シーズン中の琵琶湖での釣りが実現した。
これには伏線があって、桐山プロのスポンサーに新たに名乗り出たメーカーとの会合をセッティングし、フィッシングショーに向けた新製品の開発に間に合わせるためには、これがギリギリのタイミングだったのだ。その大部分をセットアップしたのが、桐山プロの盟友であり今回琵琶湖で一緒に釣りをした杉戸繁伸プロ。ただし、琵琶湖で釣りをしてる間の2人の会話を聞いている限り、シーズン中の琵琶湖で釣りをすることが最大の目的であり、スポンサーとの仕事や取材はそのための口実のような気がしないでもない。
それにしても琵琶湖でも日々は早朝から夜中まで予定がびっしりで休む暇もない。そんなスケジュールの中で、杉戸プロはすてきなパーティーを用意していた。親しいバスフィッシングガイドと釣り仲間だけで、桐山プロを囲んで夕食をともにしながら大いに釣りの話にふけろうという、なんともぜいたくな一夜である。
当然、話は大盛り上がりで、尽きるところがない。アメリカの話、琵琶湖の話、トーナメンターやフィッシングガイドの生活の話、もちろんお金の話やオフレコのきわどい話が出まくり。「ビデオ止めて!!」「今のピー!!」の叫び声が飛び交う。危な過ぎて、これを公開できるかどうか……。もし公開するとしたら、編集担当者は何日も徹夜しないといけないだろうね。
■P.S. 琵琶湖からのライブはこれでいったん終了するが、このページはまだ完結したわけではない。近日中に新しいタックルの話題やムービーも追加して完成する予定。それまでしばらくお待ちいただきたい。
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